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膵臓がんの訪問看護・訪問リハビリテーション(がんリハ)

膵臓がんとは:基本的な知識と理解

膵臓がんと診断された方、あるいはその疑いを持たれた方にとって、まずこの病気の特徴を正しく理解することが大切です。膵臓がんは膵臓の導管(主に膵管)を構成する細胞から発生する悪性腫瘍で、組織学的には腺がん(膵管内腫瘍を含む)と神経内分泌腫瘍、その他の希少型に分かれます。

膵臓がんの中でもっとも多い膵管腺がんは、膵臓がんの中で最も一般的なタイプで、全膵臓がんの約95%を占めます。膵臓がんの組織型は様々ですが、その中でも膵管から発生する浸潤性膵管がんが最も多く、全体の85%程度を占めるとされています

膵管腺がん(膵臓がんの代表的タイプ)

膵管腺がんは膵臓の頭部に発生することが多く、進行すると胆管や十二指腸を圧迫して黄疸や背部痛、消化吸収不良を来します。膵体尾部に発生するものは無症状のまま進行しやすく、体重減少や糖尿病の悪化、腹部不快感で発見される場合が少なくありません。

リスク要因としては、喫煙習慣や慢性膵炎、2型糖尿病の既往、肥満、遺伝性膵がん症候群(BRCA変異や家族性膵癌)などが知られており、これらの背景を持つ方は定期的に超音波検査や血中CA19-9(腫瘍マーカー)測定を受けることで早期発見につなげることが推奨されます。

膵臓がんの診断には、超音波検査で膵臓の形態異常をとらえた後、CTやMRI、さらに内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)や超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)による組織診断が行われます。これらの画像診断と生検を組み合わせることで、がんの浸潤範囲やリンパ節、肝転移の有無を評価し、手術適応や化学療法の方針を決定します。

膵臓がんは早期に症状が乏しく、発見が遅れがちである一方、手術適応となる限局性病変であれば膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除術によって根治を目指せます。しかし、術後には消化酵素分泌の低下による脂肪便や耐糖能障害が起こりやすく、これらに対しては膵酵素補充療法やインスリン療法、食事指導が欠かせません。また、切除不能例や再発例では、化学療法や放射線療法、分子標的治療が中心となり、副作用対策や疼痛緩和が重要なケアとなります。

膵臓がんの予後を改善するには、リスクを抱える方の早期スクリーニングと精密検査が鍵となります。膵酵素補充や糖代謝管理、栄養指導など多角的なサポートを受けながら、主治医や専門の医療チームとともに最適な治療・療養計画を立てていくことが、患者さんのQOL(生活の質)を維持し、長期生存につながる第一歩となります。

転移しやすい膵臓がん

膵臓がんは進行すると、まず周囲のリンパ節へと浸潤しやすく、さらに肝臓や肺、腹膜へと転移が広がることが少なくありません。特に肝転移は頻度が高く、手術前後の化学療法やゲムシタビンとシスプラチンを組み合わせた集学的治療が検討されます。さらに腹膜播種を認めた場合には、がん細胞が腹腔内に散布されるため、標準的な切除手術だけでなく、全身状態に合わせた化学療法の継続や、場合によっては腹腔内化学療法の併用など柔軟な治療計画が必要です。

治療とがんリハビリテーションの重要性

膵頭部に発生したがんに対して行われる膵頭十二指腸切除術(いわゆるWhipple手術)や、体尾部にある病変への膵体尾部切除術は、ともに大きな手術侵襲を伴います。術後には消化酵素の分泌低下による脂肪便や体重減少、さらには糖代謝異常からくる血糖コントロール障害が起こりやすく、また強い手術侵襲によって体力低下や倦怠感が顕著になることもあります。こうした術後の合併症を放置すると、栄養状態の悪化だけでなく、日常生活動作の低下や精神的ストレスの増大を招きかねません。

  • 手術療法の後も続く機能障害への対応:膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除術は根治を目指す一方、消化酵素分泌の低下や耐糖能障害をもたらします。これらに対しては膵酵素補充療法やインスリン療法を継続的に調整しながら、消化・血糖コントロールを維持します。
  • 化学療法・放射線療法の副作用緩和:GemcitabineやFOLFIRINOXなどのレジメンは吐き気・倦怠感・末梢神経障害を引き起こします。訪問看護では薬剤管理や点滴ルートの管理を行い、緩和ケアを取り入れて生活の質を守ります。
  • 迅速な疼痛管理と安楽体位の確保:膵臓がんでは背部痛やがん性疼痛が強く出やすいため、適切な鎮痛薬(オピオイド含む)投与とともに、訪問リハビリで身体のポジショニング指導やクッションの活用を支援します。
  • 体力低下と栄養不良の改善:大きな手術や抗がん剤による体力低下と食欲不振に対し、管理栄養士と連携して高カロリー・高たんぱくの栄養補助食品や小分け頻回食を提案し、理学療法士が筋力増強運動や呼吸リハを組み合わせて持久力を向上させます。
  • 自立度を高める日常生活動作訓練:作業療法士が入浴・更衣・トイレ動作の練習を通して自助具活用や動線整備を提案し、退院後の在宅生活での自立を支えます。
  • チームによる多職種連携の推進:医師、看護師、理学・作業・言語聴覚療法士、管理栄養士、薬剤師、精神保健福祉士らが定期的に情報を共有し、治療計画やケアプランを見直すことで、患者さんとご家族のQOL維持・向上を総合的にサポートします。

在宅での療養を支える訪問看護と訪問リハビリテーションでは、こうした患者さん一人ひとりの課題を多職種で包括的にケアします。訪問看護師はまず体温や脈拍、血糖値といったバイタルサインを定期的にチェックし、医師と連携してインスリンの調整を行うことで、血糖コントロールと消化吸収機能の維持に努めます。加えて、腹痛や背部痛、末梢神経障害による手足のしびれといったがん性疼痛の緩和には、適切な鎮痛剤投与や緩和ケアの専門的知見を活かしたポジショニング指導を行い、痛みの軽減と安楽な体位保持を支援します。

訪問リハビリテーションでは理学療法士や作業療法士が筋力低下や倦怠感を改善するための段階的な運動プログラムを提案し、歩行や日常動作への自信を取り戻す訓練を進める一方で、食事動作や入浴、更衣など生活動作の再獲得を支援します。

こういった形で食欲不振への対応や生活上の不安に寄り添いながら、患者さんとご家族のQOL向上を目指して一丸となってサポートを提供します。

膵臓がんと訪問看護・訪問リハビリテーション

膵臓がんの治療を終えて在宅療養を始める患者さんにとって、訪問看護と訪問リハビリテーションは欠かせない支えとなります。特に膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除術を受けた直後には、膵臓から分泌される消化酵素が大きく減少するため、脂肪便や腹部膨満感、体重減少といった消化・吸収障害が起こりやすくなります。

訪問看護師は、ご自宅での服薬指導を行いながら、日々の排便状態や栄養摂取量を細かく観察します。同時に、切除による耐糖能異常が出現した場合には血糖測定を助け、必要に応じてインスリン療法の調整や食事のタイミング・内容について医師や管理栄養士と連携しながら支援を進めていきます。

化学療法による吐き気や倦怠感、末梢神経障害に苦しむ時期には、訪問看護師が点滴ルートのケアや吐き気止めの服薬管理を行い、少量頻回食や高カロリー補助食品の提案を通して低栄養状態の改善を図ります。痛みの強い患者さんには適切な鎮痛薬の管理を担い、安楽な姿勢の工夫や緩和ケアの視点からのタッチケアを取り入れることで、生活の質を保つサポートを行います。

一方、訪問リハビリテーションでは理学療法士や作業療法士が廃用症候群を予防するための段階的な筋力トレーニングや呼吸運動を提供し、手術後の体力低下に歯止めをかけます。さらに入浴や更衣、トイレ動作といった日常生活動作の再獲得を目指し、自助具の提案や住環境の整備アドバイスを通じて患者さんが自宅で安心して暮らせるよう支援します。

これらの専門職が密に連携しながら、患者さんとご家族の希望に沿った最適なケアプランを構築することで、膵臓がんの療養生活を総合的に支える体制が築かれるのです。

もしかして?膵臓がんの初期症状チェックと進行時のサイン

気づきにくい膵臓がんの初期症状

膵臓がんは、早期にはほとんど自覚しにくい病気です。自覚症状がなく、健康診断や人間ドックの超音波検査や採血(CA19-9などの腫瘍マーカー)で偶然発見されることも珍しくありません。しかし、日常生活の中で胃もたれのような鈍い上腹部の不快感や背中に放散する痛みを感じたり、いつのまにかお腹周りが張っているような感じを覚えたりすることがあります。

特に、これまで感じたことのない腰の重だるさや食後に息苦しさを覚える場合は要注意です。また、新たに糖尿病を指摘された方や、これまで順調だった血糖コントロールが急に悪化したケースも、膵臓の働きが落ちているサインとして見逃せません。

さらに、何の運動もしていないのに意図しない体重減少や、食後の満腹感が早く訪れる“早期膨満感”を繰り返すようなら、一度専門医への受診を検討しましょう。こうした症状が数週間以上続き、改善が見られない場合には自己判断をせず、消化器内科あるいは消化器外科の受診が重要です。

膵臓がんの初期症状チェックリスト

  • 上腹部の鈍い痛みや不快感が続く
  • 背中に放散する刺すような痛みを感じる
  • 検査で新たに指摘された糖尿病や、これまで安定していた血糖値の急激な悪化
  • 何の運動もしていないのに続く意図しない体重減少
  • 食後すぐに感じる満腹感(早期膨満感)
  • 皮膚や白目の黄染、尿の色が濃く便が白っぽくなる黄疸症状
  • 脂肪便(脂っぽく臭い強い便)や下痢・便秘などの消化吸収障害
  • 全身のだるさや慢性的な疲労感
  • かゆみ(胆汁うっ滞による皮膚掻痒感)
  • 腹部の張りや腹水による膨満感

上記のうちいずれかに当てはまり、2週間以上続く場合や改善が見られない場合は、自己判断せずに消化器内科専門医への相談を検討しましょう。

膵臓がんが進行した場合に現れる症状

進行した膵臓がんでは、より目立った症状が現れてきます。がんが膵頭部で胆管を圧迫すると、皮膚や眼球の白目が黄色く染まる黄疸が出現し、尿が茶褐色に濃くなり、便が白っぽくなることがあります。がん細胞が周囲の神経を刺激するため、持続的な上腹部から背中にかけての刺すような痛みが強くなることも少なくありません。

また、腹膜播種が進行すると腹水がたまりやすくなり、お腹の張りや呼吸のしづらさが生じます。肝臓に転移をきたすと右季肋部の鈍い痛みや黄疸の悪化を感じる場合があり、骨転移では動くたびに鋭い痛みが走ることがあります。

これら進行期の症状は、単に消化器の異常だけでなく、全身状態の著しい悪化を示すサインですから、一つでも該当するものがあれば速やかに専門医の精密検査を受け、適切な治療と緩和ケアを受けることが大切です。

  • 持続的な上腹部痛や背部への放散痛が強くなる
  • 黄疸の出現により皮膚や眼球結膜が黄色く染まり、尿が濃く便が淡色化する
  • 意図しない体重減少および食欲不振が顕著となる
  • 全身倦怠感や癌性消耗症(カヘキシア)による著しい体力低下
  • 肝転移による右季肋部鈍痛や肝機能障害(黄疸悪化)
  • 腹膜播種に伴う腹水貯留で腹部膨満感や呼吸困難を生じる
  • 骨転移による動作時の激しい骨痛や圧痛
  • 消化酵素分泌低下による脂肪便(脂っぽく臭い強い便)や下痢・吸収不良
  • 新規発症または急速悪化した糖尿病や血糖コントロール不良
  • 抗がん剤治療後の末梢神経障害に伴う手足のしびれやチクチク感

チェック後の対応と内視鏡検査の重要性

症状が続く期間をまずご自身で確認しましょう。上腹部の鈍い痛みや腰への放散痛、食後の早期膨満感、原因不明の倦怠感や体重の著しい減少などが2週間以上続く場合には、自己判断せず速やかに消化器内科や消化器外科の専門医を受診してください。

受診の際には、症状がいつごろから始まったのか、痛みや不快感が食事や姿勢とどのように関係しているかを詳しく伝えることが大切です。また、慢性膵炎や2型糖尿病の既往、家族に膵臓がんや膵嚢胞性疾患の方がいるかどうか、喫煙や過度の飲酒習慣があるか、さらには体重増減や食習慣の変化についても医師に共有しましょう。これらの情報が早期発見に向けた検査計画の立案に不可欠です。

診断にはまず腹部超音波検査やCT・MRIといった画像診断が行われ、粘膜の異常だけではなく膵実質や周囲血管への浸潤の有無を調べます。必要に応じて、超音波内視鏡(EUS)を用いた微細な観察や穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)で組織を採取し、確定診断を得ることが一般的です。また、血中CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカー測定は経過観察や治療効果の判定に役立ちます。

国立がん研究センターによると、膵臓がんは早期(ステージI)で発見できれば5年生存率が20%前後まで改善すると報告されていますが、ステージIVまで進行すると10%を下回ることが多いため、些細な違和感でも見逃さず早期受診・精密検査を受けることが、その後の経過を大きく左右します。

膵臓がんの原因とリスク要因チェックリスト

以下の項目は、膵臓がんのリスクを高める可能性がある要因です。あてはまるものがいくつあるかを確認し、生活習慣や検診の見直しに役立ててください。

膵臓がんのリスク要因チェックリスト

  • 慢性膵炎の既往がある
  • 2型糖尿病を発症・長期間患っている
  • 家族に膵臓がんや膵嚢胞性疾患の既往者がいる(BRCA変異や家族性膵癌症候群など)
  • 長年の喫煙習慣がある
  • 過度の飲酒習慣がある
  • 肥満または過体重である
  • 高脂肪・高カロリー食の常食(赤身肉や加工肉の多摂取)
  • 野菜や果物の摂取量が少ない
  • 中年以降(特に60歳以上)の年齢
  • 遺伝性腫瘍症候群の保因(Lynch症候群、Peutz–Jeghers症候群など)

ストレスとの関係について

膵臓がんとストレスの関係については、発症リスクを高めるかどうかをめぐってはなお議論が残るものの、近年の基礎・臨床研究は「進行や転移を加速し得る生物学的メカニズム」が徐々に解明されつつあります。

喫煙や肥満、糖尿病といった確立したリスク因子に比べ、ストレス単独で膵臓がんの罹患率を明確に押し上げるというエビデンスは限定的で、一致した結論には至っていません。

しかし、ストレス関連ホルモンが糖代謝異常や慢性炎症を介して間接的に腫瘍環境を整えてしまう点や、肥満との相乗効果が指摘され始めた点を踏まえると、ストレスケアは一次予防だけでなく再発・進行抑制の観点からも無視できないテーマになりつつあります。

総じて、膵臓がんとストレスの関係は「発症リスクの直接的上昇」というより「がん進展を後押しする内分泌・免疫学的ネットワーク」として理解するのが妥当でしょう。したがって、喫煙や肥満、糖尿病など既知のリスク因子の管理に加え、慢性的な心理的ストレスを軽減する生活習慣の整備や精神腫瘍学的ケアを積極的に取り入れることが、膵臓がん患者の長期予後と生活の質を守るうえで重要となります。

罹患率と死亡率の男女差

日本における膵臓がんの罹患率・死亡率は男性でやや高い傾向があります。国立がん研究センターの統計では、男性の罹患リスクは女性の約1.3~1.7倍とされ、特に60歳以上で多く見られます。この背景には、男性の喫煙・飲酒習慣、食生活の違いなどが影響しています。一方で、近年は女性のライフスタイル変化に伴い、男女差は縮小しつつあります。

予防のためにできること

  1. 定期的な便潜血検査・大腸内視鏡検査:ポリープの早期発見・切除でがん化を防ぐ
  2. 禁煙・節酒
  3. バランスの良い食事:赤肉・加工肉を控え、野菜・果物・全粒穀物、食物繊維を積極的に摂取
  4. 適度な運動:週150分程度の有酸素運動を目標に
  5. 体重管理・生活習慣病のコントロール
  6. ストレスマネジメントと十分な睡眠
  7. 家族歴がある場合は早期から専門医受診

膵臓がんは生活習慣と深く関わるがんです。自分でコントロールできるリスク因子を減らし、検診を活用することで予防につなげましょう。

膵臓がん患者さんの在宅療養を支える訪問看護・訪問リハビリテーション

膵臓がんの治療(手術・化学療法)後や通院が困難な患者さんが、住み慣れた自宅で安心して療養できるよう、訪問看護と訪問リハビリテーションがサポートします。

訪問看護の役割

  • 症状管理:排便コントロール(便秘・下痢対策)、腹痛ケア、ストーマ管理
  • 栄養サポート:食欲不振や体重減少への対応、管理栄養士と連携した食事指導
  • 疼痛管理:がん性疼痛に対する薬剤(鎮痛剤・麻薬)の適切な使用と観察
  • バイタルサイン観察:体温・血圧・脈拍・呼吸を定期測定し、異常を早期発見
  • 精神的ケア:不安やストレスへの傾聴・カウンセリング、ACP(人生会議)の支援

訪問リハビリテーションの内容

  • 理学療法(PT):筋力維持・増強訓練、歩行訓練、呼吸リハビリ
  • 作業療法(OT):日常生活動作(ADL)の再獲得、家事動作(IADL)支援、住環境整備提案
  • 言語聴覚療法(ST):嚥下機能評価・訓練、誤嚥予防のための口腔ケア指導

多職種連携によるチームアプローチの重要性

膵臓がん患者さんの在宅療養をより質の高いものにするためには、訪問看護師やリハビリ専門職だけでなく、主治医、薬剤師、管理栄養士、ケアマネジャー、ホームヘルパーなど、様々な専門職がそれぞれの専門性を活かし、情報を共有しながらチームとして患者さんとご家族を支える「多職種連携」が不可欠です 。

膵臓がんの患者さんは、医療的な問題だけでなく、食事や栄養、日常生活動作、精神的な問題、経済的な問題、介護の問題など、多岐にわたる複雑なニーズを抱えています。これらのニーズに対して、一人の専門職だけで対応することは困難です。それぞれの専門職が持つ知識や技術を結集し、共通の目標に向かって協力することで、より包括的で質の高いケアを提供することが可能になります。例えば、在宅ホスピス緩和ケアチームにおいては、患者・家族のニーズに応じて複数の事業所から医療・介護サービスが提供され、ケアマネジャーやソーシャルワーカーもチームに参加することが要件として挙げられています。

効果的な多職種連携のためには、チーム内での定期的なカンファレンス(合同会議)の開催や、連絡ノート、電子カルテなどの情報共有ツールを活用した、円滑なコミュニケーションが重要です 。ケアマネジャーや訪問看護師などが中心となり、各専門職間の調整役を担うことも、チームアプローチを円滑に進める上で大切なポイントとなります。

訪問サービスの導入プロセスとケアプラン作成

訪問看護や訪問リハビリテーションといった在宅サービスは、多くの場合、入院中の病院の医師や看護師、医療ソーシャルワーカーからの紹介、あるいは地域のケアマネジャーを通じて導入の手続きが進められます。退院が近づくと、病院のスタッフと在宅サービスの担当者が集まり、患者さんの情報共有や退院後の療養生活について話し合う「退院前カンファレンス」が開催されることもあります 。これにより、入院中から在宅療養へのスムーズな移行を目指します。

在宅サービスの利用が開始されると、訪問看護師やリハビリ専門職が患者さんのご自宅を訪問し、全身状態、日常生活の状況、ご本人やご家族の意向などを詳細に把握するためのアセスメント(評価)を行います。このアセスメント結果に基づいて、個別のケアプラン(看護計画やリハビリテーション計画)が作成されます。このケアプランは、画一的なものではなく、患者さん一人ひとりの目標やニーズに合わせてオーダーメイドで作成され、定期的にその効果が評価され、必要に応じて見直しや調整が行われます。このように、患者さんとご家族が主体的に関わりながら、その時々の状況に最も適したケアが提供されるよう努められます。

専門的な訪問サービスを活用し、早期発見・的確な治療後も、安心して在宅療養が続けられる体制を整えましょう。

膵臓がん患者さんの在宅療養を支える訪問看護と訪問リハビリテーション

膵臓がんの治療を終えて退院された後、あるいは再発・進行によって通院が困難になった場合でも、患者さんが住み慣れたご自宅で安心して療養を続けるには、医療的かつ生活的な支援を両立できる体制が不可欠です。その中核となるのが「訪問看護」と「訪問リハビリテーション」です。

これらのサービスは、身体的苦痛の緩和、栄養・生活機能の維持、精神的支援、さらにはご家族の介護負担軽減にもつながる、在宅医療の大きな柱となります。

訪問看護の役割:術後ケア、症状緩和、栄養・心理的支援

● 症状管理と術後のケア

訪問看護師は、膵臓がん手術後の患者さんが抱えるさまざまな身体的負担を軽減し、日常生活への影響を最小限に抑えるためにきめ細やかなケアを提供します。結腸や直腸の切除術後には、排便リズムの乱れや下痢・便失禁、ストーマ装具による皮膚トラブルなどが起こりやすく、これらの症状を医師の指示に従って観察し、適切なスキンケアや排便トレーニングを通じて排便機能の安定を図ります。

また、抗がん剤治療中には吐き気や倦怠感、手足のしびれといった副作用に対して薬剤管理を行い、必要に応じて緩和ケアの視点から疼痛コントロールや呼吸苦緩和の援助を行うことで、快適な療養環境づくりを支援します。

● 栄養管理と経管栄養サポート

栄養管理においては、消化吸収機能の低下や食欲不振によって低栄養に陥りやすい膵臓がん患者さんの状態を把握し、管理栄養士や医師と連携して食事形態の工夫や補助栄養食品の導入を提案します。経口摂取が難しい場合には胃ろうや中心静脈栄養、輸液ポートを用いた栄養補給にも対応し、脱水や体重減少の予防に努めることで、治療効果を支える体力の維持を図ります。

● 精神的ケアとACP(人生会議)の支援

患者さんとご家族が抱える精神的な不安にも寄り添い、訪問看護師は信頼できる相談相手としてその心情を傾聴します。進行期や終末期には疼痛や呼吸困難への不安が強まるため、安楽な体位の提案や痛みを緩和する援助を行うだけでなく、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を通じて「どのように最期を迎えたいか」というご本人とご家族の思いを尊重した話し合いの場を設け、生き方や治療方針を共に考える支援を行います。こうした医療的・生活的・心理的ケアを総合的に提供することで、訪問看護は膵臓がん患者さんの在宅療養を支える要となるのです。

訪問リハビリテーションの内容:体力維持と生活再建の支援

● 理学療法(PT):体力・機能維持の支援

訪問リハビリテーションでは、まず理学療法士が膵臓がん手術後に起こりやすい体重減少や全身の筋力低下、倦怠感に着目し、患者さんの身体機能を維持・回復するための運動プログラムを提案します。具体的には、廃用症候群を防ぐための筋力強化訓練やバランス訓練を通じて、歩行や立ち上がりなど基本的な動作の自立性を高める支持を行います。

また、腹部の手術痕周辺にかかる負担を軽減しながら呼吸筋を鍛える呼吸リハビリテーションや、杖や歩行器などの福祉用具選定のアドバイスも行い、ご自宅での安全な移動と活動範囲の拡大をサポートします。

● 作業療法(OT):日常生活の再構築

作業療法士による支援では、排便リズムの乱れやストーマ装具の扱いに伴う日常動作の課題に焦点を当て、ご本人が“自分らしい生活”を取り戻せるよう手助けします。たとえば、洋服の着替えやトイレ動作、台所での調理など、具体的な家事動作を練習しながら自助具の使い方を指導し、手すりの設置や動線の見直しといった住環境の改善提案を行います。こうした取り組みによって、患者さんは身体的制限を乗り越え、安心して日常生活を送るための自信と技術を身につけることができます。

● 社会参加と心理的回復の促進

さらに、在宅での療養生活における心の支えとして、リハビリ専門職は社会参加や趣味活動の再開を後押しします。

膵臓がん治療後は外出機会が減りがちですが、近隣のウォーキングや体操教室への参加、オンラインサロンでの交流など、患者さんの興味や体調に合わせた活動プランを個別に提案します。

こうした“できること”を増やす経験を通じて、自尊心の回復や孤立感の軽減が促進され、身体機能だけでなく心の回復にもつながるのです。

多職種連携によるチームアプローチの重要性

膵臓がんの患者さんは、身体症状だけでなく、栄養・生活機能・精神面・経済的問題など、多方面にわたる課題を抱えることがあります。こうした複雑なニーズに応えるためには、以下のようなチーム連携による対応が不可欠です。

  • 医師(主治医)
  • 訪問看護師
  • 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
  • 管理栄養士
  • 薬剤師
  • ケアマネジャー
  • ソーシャルワーカー
  • ホームヘルパー など

定期的なカンファレンスや電子カルテ・連絡ノートでの情報共有を通じて、全員が一つの目標に向かって連携することが、より良い療養環境の実現に繋がります。

大田区鵜の木の訪問看護・訪問リハビリ ─ 大田ケア訪問看護ステーション

大田ケア訪問看護ステーションでは、膵臓がんの治療後や再発・進行期にある患者さんが、ご自宅で自分らしく療養生活を送ることができるように、訪問看護師とリハビリ専門職が連携して支援を行っています。

私たちの強みは、ご利用者さまのわずかな体調や食欲の変化、生活リズムの変動を丁寧に見逃さずキャッチし、必要な支援をすぐにご家族と共有できる体制を整えている点にあります。栄養管理、症状緩和、体力維持のリハビリを軸に、ご家族とチームで在宅ケアを進めています。

がんの緩和ケアの土台は「対話による心のつながり」

膵臓がんのご利用者さまにとって、術後の体調変化や栄養障害、不安感は避けて通れないものです。大田ケアの訪問看護師は、患者さんの体調や精神状態だけでなく、食事摂取状況や栄養状態、排便・水分バランスまで細やかに観察し、必要に応じてケアプランを柔軟に調整します。

胃全摘や部分切除後には、ダンピング症候群、早期満腹感、消化不良などの対応が求められるため、看護師がこまめに状態を把握し、医師との連携のもとサポートを行います。

リハビリスタッフも、患者さんの「日常生活を少しでも快適に送りたい」「体力を取り戻したい」といった目標の達成に向けた支援内容を、常にご家族と共有。その過程で、ご家族も「ケアチームの一員」として主体的に関わることができるようになります。

24時間365日対応可能な安心の連絡体制

大田ケアでは、緊急時にも対応できるよう24時間365日体制の連絡窓口を準備しています。たとえば、胃瘻のトラブルや急な嘔吐・下痢、脱水が懸念される場合にも、看護師が迅速に受診先の案内や応急処置のアドバイスを行います。

訪問開始時に、緊急時の対応フローを事前にご家族へ明確に説明し、夜間や休日にも慌てず冷静に行動できるようサポートします。

ご家族も安心して関われるケアの仕組み

訪問スケジュールやケアプランの内容については、ご利用者さんの生活スタイルやご家族の都合を丁寧に伺いながら調整。ご家族が果たす役割も明確にし、「無理なく・安心して支えることができる」体制づくりを目指します。

訪問時の対話を通じて、ご利用者さん・ご家族・専門職チームとの間に一貫性のあるケアを構築。生活の中で気になる点や変化にもすぐに対応できる、柔軟で親身なサポートを提供します。

「自分らしく、生きる」を一つひとつ増やす

膵臓がんの療養生活では、「食べること」「動くこと」「人と話すこと」が失われがちですが、大田ケアでは、そうした日常の一つひとつを大切に支えています。訪問看護と訪問リハビリが連携し、患者さんの「その人らしさ」を尊重しながら、自宅で安心して過ごせる日々を創造します。

「治療が終わったけど食事に不安がある」「体力が戻らなくて外に出るのが億劫」「家族がどうサポートすればいいか分からない」──そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。大田ケアのチームが、一緒にその一歩を支えてまいります。

FAQ:よくある疑問にQ&A形式で回答

Q. 訪問看護サービスを利用するにはどうすればよいですか?
A. ご利用を希望される場合は、まずかかりつけ医または地域包括支援センターや居宅介護支援事業所を通じて要介護認定の申請を行ってください。要介護認定がおりた後、ケアマネジャーがケアプランを作成し、そのプランに基づいて大田ケア訪問看護ステーションがサービスを提供します。直接当ステーションにご連絡いただいても手続きの流れをご案内できますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. 週に何回、何時間利用できますか?
A. 訪問看護の頻度や時間は、ケアプランで決定します。通常は週に1~3回、1回あたり30分から90分程度が目安ですが、症状の度合いやご家族のご希望によって柔軟に調整可能です。リハビリテーションを中心に行う場合や症状管理が多い場合は、より頻度が増えることもあります。

Q. 料金の自己負担はいくらですか?
A. 介護保険をご利用の場合は、要介護度に応じて自己負担が原則1〜3割となります。医療保険適用の訪問看護では、医師の指示で行う注射や点滴なども保険診療としてカウントされ、ご負担額は医療保険の自己負担割合に準じます。詳しい費用については、個別性があるのですが、1割負担の方で60分訪問1000円ぐらいと考えておくとわかりやすいです。

Q. 24時間対応は可能ですか?
A. 大田ケアでは夜間・休日のオンコール体制を整えており、急な痛みの悪化や呼吸困難などの緊急事態にも電話でのご相談を受け付けています。緊急度が高いと判断した場合は、訪問看護師が緊急訪問を行い、一次的な対応を実施します。

Q. 訪問リハビリテーションはどのような内容ですか?
A. がん治療に伴う筋力低下や関節可動域制限、呼吸機能の低下を軽減するための運動プログラムを提供します。ベッド上で行う抗重力運動や呼吸リハビリ、リンパ浮腫ケアを組み合わせ、患者さんの体調に合わせて無理なく継続できる方法をご提案します。

Q. 自宅に必要な福祉用具はどう手配すればよいですか?
A. ケアマネジャーと連携し、手すりやスロープ、ポータブルトイレ、シャワーチェアなどの福祉用具を介護保険サービスでレンタルできます。大田ケアのスタッフがご自宅を訪問して適切な配置や使い方をアドバイスし、安心・安全な環境づくりをサポートします。

Q. 医師との連携はどのように行われますか?
A. 訪問看護師は定期的にバイタルサインを記録し、症状の変化を詳細に把握して医師に報告します。必要に応じて医師の指示を取り付け、薬剤の調整や注射管理を行うほか、電話やオンラインでの迅速な連絡体制を整えています。

Q. 心理的なサポートも受けられますか?
A. 看護師が日常的な会話を通じて不安や悩みを傾聴し、必要に応じて心理士や専門カウンセラーと連携したグリーフケアやスピリチュアルケアをご提案します。ご家族へのサポートも重視し、介護負担や経済的な不安についても適切な制度やサービスを紹介します。

Q. アドバンス・ケア・プランニング(ACP)はどのように進めますか?
A. ACPでは、医師が予後予測を説明し、延命治療の希望や最期の過ごし方について患者さんの意思を整理します。大田ケアのチームもその意思が尊重されるようサポートします。

Q. 申し込み後、どのくらいで訪問が始まりますか?
A. ケアプランが確定し、必要書類が整い次第、通常は1週間以内に初回訪問を設定します。急ぎの場合は調整してより早い開始も可能ですので、ご希望があればご相談ください。

情報源・出典元データなど

専門機関

学術論文

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