はじめに
看護師の島袋です。
私は、集中治療領域で10年以上の経験から、医療依存度の高い(人工呼吸器管理、膀胱留置カテーテルなど)患者様の受け持ちを多くしてきました。また、呼吸療法認定士の資格を取得しており、在宅人工呼吸療法の管理は得意としています。ここのステーションに任せてよかったと思えるように、全力で努めてまいります。
在宅人工呼吸療法(HMV)とは
病院外で人工呼吸を使用しながら生活することです。方法は、気管切開せずマスク等で行う非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)と気管切開下陽圧換気療法(TPPV)があります。
❶侵襲的陽圧換気療法(TPPV)
→気管を切開し気道に直接気管チューブを挿入することにより安定した起動の確保と呼吸の補助が可能な方法です。
❷非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)
→侵襲的陽圧換気療法のように気管挿管、気管切開などの侵襲的な主義を使用しないで、鼻もしくは鼻口マスクを使用して非侵襲的に陽圧換気を行う方法です。
人はなぜ呼吸をするのか
酸素を取り入れ、二酸化酸素を排出することにより、体のエネルギー生産と酸塩基のバランスを保つために不可欠だからです。
酸素を取り入れることで、肺の中では❶換気❷ガス交換が行われます。
❶換気
空気が外部から肺へ、または肺から外部へ出入りする過程です。吸気では酸素を肺に取り込み、呼気では二酸化炭素を排出します。
❷ガス交換
肺胞(肺の細かい空気の袋)内で、酸素と二酸化炭素が血液と交換されます。酸素は血液中の赤血球に取り込まれ、全身に供給され、二酸化酸素は血液から肺胞に放出され、呼気として外に排出されます。
これらにより、血液に取り込まれた酸素が全身に送られることで、臓器、組織、細胞の活動を維持することができます。
なぜ人工呼吸器は必要なのか
何かしらの原因で呼吸機能が低下または停止した場合に、生命を維持するための酸素を取り入れたり、二酸化酸素を排出することができなくなるため、呼吸の補助として必要な機器となります。
在宅の対象となる疾患は以下となります。
❶神経筋疾患:筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症など
❷慢性呼吸不全:肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺水腫など
❸睡眠時無呼吸症候群など
大田ケア訪問看護が行う人工呼吸器装着者の支援
❶全身状態の観察
・人工呼吸器のモニタリングを確認し、呼吸のリズム、深さ、回数、SPO2値、呼吸音など呼吸状態の観察をします。必要に応じて痰の吸引を行います。また、血圧測定、脈拍の確認をとり、循環動態の観察を行います。
❷人工呼吸器のトラブル対処
○気道内圧低下アラーム⇨回路の緩みや外れ、気管チューブのカフ漏れ
対処:回路の確認、カフ圧計を用いて基準値に合わせていきます。
○気道内圧上昇アラーム⇨回路の閉塞、痰の貯留
対処:回路がベッドに挟まっていないか確認、吸引で対応します。
○電源不良アラーム:コンセントの抜け、バッテリー切れ
○その他⇨室内の気温と人工呼吸器の温度設定により、回路に結露が起きやすくなるためウォータートラップの確認をします。
❸感染予防
○消毒
・MRSAや緑膿菌などの肺炎の原因菌の多くが、接触感染であるため、人工呼吸器装着者のケアを行う時には、手洗い、手指の消毒を必ず行います。
○誤嚥の予防
・定期的な口腔内・咽頭の清拭を行います。これは、家族やヘルパーに協力してもらいます。カフ圧を保持するために、適宜圧力を確認、空気の補充を行います。
・気管内吸引操作は清潔操作とし、吸引チューブはしっかりと消毒します。
・口腔や鼻腔を吸引した後のチューブは、アルコール消毒したとしても続けて使用はしないです。
❹利用者さまとご家族さまの支援
・人工呼吸器の使い方や注意点、非常時の対処方法、緊急連絡の手引きなどを指導したり、病状や体調の変化、人工呼吸器の使用などによる心理的なストレスの傾聴などの支援を、日々の業務で行います。
また、利用者さんの生活状況、家族の介助力を確認し、必要に応じて、ケアマネージャーへの連絡と提案なども行います。
❺その他支援(人工呼吸器管理以外にも)
○在宅経腸栄養法、在宅中心静脈栄養法の管理
・胃ろう、PTEG、胃管からの経腸投与。体外式カテーテル、皮下埋め込み式カテーテルからの高カロリー輸液投与などを管理していきます。
○膀胱留置カテーテルの管理、排便コントロール、服薬管理など
・他職種との連携を図り、廃用症候群の予防に努めていきます。
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身体のためにはとても大切な機械となる人工呼吸器。
困ったことがあれば、お気軽にご連絡くださいね。