肝臓がんとは:基本的な知識と理解
肝臓がんと診断された方、あるいはその疑いを持たれた方にとって、まずこの病気の特徴を正しく理解することが大切です。肝臓がんは主に肝細胞(肝臓の主要な構成細胞)や胆管上皮から発生する悪性腫瘍で、大きく「肝細胞がん(HCC)」と「肝内胆管がん(ICC)」の二つに分類されます。
- 肝細胞がん(HCC)
肝臓がんの中で最も多いタイプで、全症例の約75~85%を占めます。肝細胞がんは長年にわたる肝炎ウイルス(B型・C型)感染やアルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などによる慢性炎症を背景に、肝細胞が異常増殖して発症します。早期には自覚症状に乏しく、腹部超音波検査や血液中の腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-IIなど)で発見されることが多いです。 - 肝内胆管がん(ICC)
肝臓内の胆管(胆汁を運ぶ管)の上皮細胞から発生するがんで、全肝臓がんの約10~15%を占めます。組織学的には扁平上皮様外観を示し、予後は肝細胞がんよりもやや不良とされます。腹痛や黄疸、体重減少などの症状で発見されることが多く、診断にはCTやMRI、ERCP(内視鏡的逆行性胆管造影)などが用いられます。
肝臓がんの特徴
- リスク因子
- 慢性肝炎ウイルス感染(HBV、HCV)
- 長期の飲酒習慣によるアルコール性肝障害
- 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
- 原発性胆汁性胆管炎や原発性硬化性胆管炎などの胆管炎症性疾患
- 症状
早期には無症状で、進行すると腹部膨満感、右上腹部痛、黄疸、腹水、体重減少などが現れます。 - 診断方法
- 画像診断:腹部超音波、造影CT、造影MRI
- 血液検査:AFP(αフェトプロテイン)、PIVKA-II(蛋白誘導性ビタミンK欠乏Ⅱ)
- 組織診:針生検による病理診断(必要に応じて)
- 治療選択肢
- 根治療法:肝切除術、肝移植
- 局所療法:腹腔鏡下焼灼術(RFA)、経皮的エタノール注入(PEI)
- 動注化学療法:肝動脈化学塞栓療法(TACE)
- 全身療法:分子標的薬(ソラフェニブ、レンバチニブなど)、免疫チェックポイント阻害薬
- 予後とフォローアップ
肝臓がんは再発率が高いため、治療後も定期的な画像検査と腫瘍マーカー測定による長期フォローが不可欠です。背景肝(肝炎や肝硬変)の治療・管理も重要です。
肝細胞がん(肝臓がんの代表的タイプ)
肝細胞がんは肝臓の実質細胞(肝細胞)から発生するがんで、全肝臓がんの約75~85%を占める最も一般的なタイプです。肝細胞がんは肝門部近くや肝表面、左右いずれの肝葉にも生じますが、進行すると門脈枝へ浸潤して門脈圧亢進や腹水を招いたり、肝内胆管を圧迫して黄疸を来すことがあります。また、辺縁に発生するものは腹部不快感や右季肋部痛で発見される一方、肝深部にできるものは無症状のまま大きくなることが多く、体重減少や食欲不振、易疲労感で初めて気づかれる場合も少なくありません。
リスク要因
- 慢性肝炎ウイルス感染(B型・C型)
- 長期的な過度飲酒によるアルコール性肝障害
- 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)による慢性肝炎
- アフラトキシン暴露、遺伝性鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)など
これらの背景を持つ方は、定期的に腹部超音波検査や血中AFP(αフェトプロテイン)、PIVKA-II(蛋白誘導性ビタミンK欠乏Ⅱ)測定を受けることで、早期発見・適切な治療開始につなげることが推奨されます。
肝臓がんは再発率が高いため、治療後は定期的な画像検査と腫瘍マーカー測定による長期フォローが必須です。背景にある肝炎や肝硬変の管理(抗ウイルス療法や生活習慣改善)も並行して行い、肝機能を守りながらQOLを維持することが重要です。
転移しやすい肝臓がん
肝臓がんは、進行するとまず周囲の肝門部リンパ節へ浸潤しやすく、さらに肝外へ血行性に転移して肺や骨、腹膜にも広がることが少なくありません。特に肺転移は比較的高頻度で認められ、手術前後には肝切除やRFA(ラジオ波焼灼術)に加え、ソラフェニブやレンバチニブなどの分子標的薬、あるいは免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた集学的治療が検討されます。
治療とがんリハビリテーションの重要性
肝切除術後に伴う機能障害への対応
肝臓がんに対し行われる肝切除術(例:右葉切除術、左葉切除術、亜区域切除など)は、根治を目指す大きな手術侵襲を伴います。術後には残存肝機能の低下による肝不全や出血傾向が起こりやすく、また門脈圧変動や胆汁漏などの合併症を招くリスクがあります。これらを放置すると、肝臓合併症のみならず全身の栄養状態の悪化や日常生活動作(ADL)の低下、さらには精神的ストレス増大につながるため、術後早期からの包括的ケアが重要です。
残存肝機能の維持・管理
肝臓を守りながら元気を保つためには、まず手術や治療のあとに残った肝臓のはたらきをしっかりサポートすることが大切です。お薬による肝保護では、グリチルリチン製剤やウルソデオキシコール酸といった成分を使うことで、肝細胞へのダメージをやわらげます。また、血液の検査ではビリルビンやアルブミン、PT-INR(血液を固める力の指標)を定期的にチェックし、数値が落ち込んでいればアルブミン製剤やビタミンKを補って肝不全を予防します。腹水がたまるようなら、利尿剤やアルブミン投与で余分な水分を調整しつつ、過剰な点滴は避けて身体への負担を減らします。
化学療法・分子標的治療の副作用緩和
化学療法や分子標的薬、免疫療法にも副作用はつきものです。ソラフェニブやレンバチニブといった分子標的薬は血圧上昇や手足のかゆみ、下痢を引き起こすことがあるため、必要に応じて降圧薬や皮膚のケア、下痢止めを併用します。免疫チェックポイント阻害薬では発熱や皮膚炎、肝炎など免疫が過剰に反応する症状が出ることがあるので、早めに見つけてステロイドで治療することが重要です。これらのお薬の管理や症状の観察は、訪問看護師がご自宅まで来てくださり、体調をしっかり把握しながらサポートしてくれます。
迅速な疼痛管理と安楽体位の確保
手術後の痛みに対しては、腹部の傷やがん性の痛みを和らげるために、オピオイドやNSAIDsなどの鎮痛薬が使われます。痛みの強さを確認しながら適切な量を調整し、訪問看護や訪問リハビリでは、クッションの使い方や体位を変えるコツをアドバイスしてもらい、痛みの負担を軽くしていきます。
体力低下と栄養不良の改善
手術や抗がん剤治療で体力が落ち、食欲がわきにくくなることもあります。そうしたときは、高タンパク・高エネルギーの栄養補助食品を少しずつ何度かに分けて飲むことで、消化への負担を抑えながら必要な栄養をとる工夫をします。また、ベッドの脇でできる軽い運動や呼吸リハビリを導入して、筋力と持久力を徐々に取り戻していきます。
日常生活動作(ADL)訓練による自立支援
日常生活での動作を自分でできるようにするのも大切です。作業療法士は着替えや入浴、トイレといった身の回りの動きを、一つひとつ練習しながら腹部に負担がかからない方法を教えてくれます。退院後を見越して、自宅の中でつまずきやすい場所を整理したり、手すりや補助具を設置したりと、安全に暮らせる環境づくりもサポートしてもらえます。
もしかして?肝臓がんの初期症状チェックと進行時のサイン
気づきにくい肝臓がんの初期症状
肝臓がんは、初期には自覚できる症状がほとんどないため、健康診断や人間ドックでの超音波検査や血液検査(AFPやPIVKA-IIなどの腫瘍マーカー)で偶然見つかることが少なくありません。しかし、日常生活の中でこれまで感じたことのないような上腹部の重苦しさや、右季肋部の鈍い痛みが続く場合は要注意です。とくに、おなかがいつのまにか張っているように感じたり、背中や右肩にまで響く痛みを覚えたりするケースでは、肝臓内に大きくなったしこりや腹水が原因となっていることがあります。
また、これまで安定していた持病としての肝炎や肝硬変が急に悪化したように、手足がむくみやすくなったり、疲れやすさやだるさが日常的になったりするのも初期のサインです。皮膚や白目が黄色くなり、尿の色が濃くなる一方で便が白っぽくなる黄疸症状は、肝臓の排泄機能が低下している証拠ですし、皮膚のかゆみは胆汁うっ滞によるものかもしれません。意識せずに体重が減ってきたり、食後すぐにおなかがいっぱいになる“早期膨満感”を感じるようになる場合も、消化吸収の働きが落ちている可能性があります。
これらの症状が2週間以上続いたり、自然に改善しない場合には、自己判断を避けて消化器内科または消化器外科の専門医を受診しましょう。早期発見が治療の選択肢を広げ、生活の質を保つための第一歩となります。
肝臓がんの初期症状チェックリスト
- みぞおちや右わき腹にいつまでも重だるさや鈍い痛みを感じる、その痛みが背中にじんわり広がるように感じる
- これまで経験したことのない腰の重だるさを覚える
- 食後に急に息苦しさを感じる
- 運動していないのに意図しない体重が続けて減少する
- 食後すぐに早く満腹感が訪れる(早期満腹感)
- 皮膚や白目が黄ばんで、尿が濃く便が白っぽくなる
- 脂っぽくて臭いの強い便(脂肪便)が続く
- 全身のだるさや慢性的な疲労感がある
- かゆみを感じる(胆汁うっ滞による皮膚掻痒感)
- 腹部が張って苦しくなる(腹水による膨満感)
こうした変化が2週間以上続く、あるいは自然に改善しないときには、自己判断せずに消化器の専門医を受診し、適切な検査を受けることをおすすめします。早めの発見が、治療の幅を広げ、安心につながる第一歩となります。
肝臓がんが進行した場合に現れる症状
進行した肝臓がんでは、まず肝臓内で大きく成長した腫瘍が胆管を圧迫することで、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が現れます。これによって尿は濃い茶褐色に、便は白っぽくなることが珍しくありません。また、がんが肝実質や周囲の神経を刺激すると、おなかの右上部やみぞおちから背中にかけて、刺すような強い痛みが持続的に感じられるようになります。さらに、肝臓の表面にがんが広がると腹水がたまりやすくなり、おなかが張って呼吸がしづらく感じることも増えてきます。
血行性に転移が進むと、肺に小さなしこりができて息切れを招いたり、骨に転移して動くたびに強い痛みを生じたりすることがあります。肝臓本体へのさらに深い浸潤では、右季肋部の鈍い痛みが増し、黄疸や倦怠感が一層悪化していきます。
これらの症状は、がんの局所的な圧迫だけでなく、肝機能の著しい低下や全身状態の悪化を示すサインです。もしこうした変化のいずれかに気づいたら、なるべく早く専門医による精密検査を受け、治療方針や緩和ケアについて相談することが大切です。
- 持続的にみぞおちや右上腹部の痛みが強くなり、背中まで響く刺すような痛みを感じる
- 皮膚や白目が黄色く染まり、尿が濃い茶褐色、便が淡い色に変わる黄疸症状が出る
- 運動していないのに体重が減少し、食欲不振が顕著になる
- 全身がだるく、癌性消耗症(カヘキシア)による著しい体力低下を感じる
- 肝臓へのがん浸潤で右季肋部に鈍い痛みが出現し、黄疸がさらに悪化する
- 腹膜播種が進行して腹水がたまり、お腹が張って呼吸がしづらくなる
- 骨転移によって動くたびに激しい骨痛や圧痛がある
- 胆汁分泌低下による脂肪便(脂っぽく匂いの強い便)や下痢・吸収不良が続く
- 新たに糖尿病を指摘されたり、これまで安定していた血糖コントロールが急速に悪化する
- 抗がん剤治療後に手足のしびれやチクチク感など末梢神経障害が現れる
「肝臓がんかもしれない」と思ったときに
肝臓がんが疑われる症状が続くときには、まず「いつからどれくらい続いているか」を自分で振り返ってみましょう。みぞおちや右わき腹の重だるさ、食後すぐに感じる満腹感、原因不明の強い疲れや体重の急激な減少などが2週間以上続く場合には、自己判断せずに消化器内科あるいは消化器外科の専門医を受診することが大切です。その際には、症状が始まった時期や、食事や体位(姿勢)の変化で痛みや不快感が増すかどうかを具体的に伝えましょう。また、B型やC型肝炎、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の既往、家族に肝疾患の方がいるか、喫煙や過度の飲酒習慣、体重の増減や食習慣の変化についても、事前に整理しておくと検査計画がスムーズに立てられます。
国立がん研究センターのデータによれば、肝臓がんをステージIの早期で発見できれば5年生存率は約20%前後まで改善しますが、ステージIVまで進行すると10%を下回る例が多くなります。そのため、わずかな違和感であっても放置せず、早期受診・精密検査を受けることが、治療の選択肢を広げ、以降の経過を大きく左右する重要な第一歩となります。
ストレスとの関係について
肝臓がんとストレスの関係は、発症リスクを直接押し上げるかどうかについてはまだ結論が出ていません。しかし近年の研究では、慢性的な心理的ストレスが体内で分泌されるコルチゾールやカテコールアミンといったホルモンを通じて、肝臓の慢性炎症やインスリン抵抗性を悪化させ、結果的にがん細胞の生育しやすい「土壌」を作り出してしまう可能性が指摘されています。とくに肥満や2型糖尿病を背景に持つ方では、ストレスがこれらの代謝異常と相乗的に作用し、肝細胞ががん化して進展・転移しやすくなるメカニズムが徐々に明らかになりつつあります。
そのため、肝臓がんの一次予防としてはもちろん、手術後や局所療法後の再発抑制や進行を遅らせる観点からも、ストレスマネジメントは無視できない要素です。具体的には、十分な睡眠とリラックス時間の確保、適度な有酸素運動やマインドフルネス瞑想、趣味や対人交流によるストレス軽減策を生活に取り入れることが推奨されます。また、長期的なストレスが続く場合には、精神腫瘍学や心療内科でのカウンセリング、認知行動療法、必要に応じた抗不安薬・抗うつ薬の使用など、専門的なサポートを活用することで、肝臓がん治療中の心身両面の健康維持につながります。
罹患率と死亡率の男女差
日本国内のデータ(2021年)を見ると、肝臓がんの新規診断例は年間34,675例で、そのうち男性が23,677例、女性が10,998例に上ります。人口10万人あたりに換算すると、男性の罹患率は38.8例に対し女性は17.1例と、男性は女性の約2.3倍という高い傾向が続いています。
また、2023年の死亡数は22,908人(男性15,226人、女性7,682人)で、人口10万人あたりの死亡率は男性25.8人、女性12.3人と、こちらも男性の方がほぼ倍のリスクを示しています。
この男女差の背景には、長期にわたる飲酒量や喫煙率の違いに加え、男性に多いウイルス性肝炎(B型・C型)やアルコール性肝障害、さらにはメタボリック症候群を背景とする非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などが影響しています。
一方で、近年は女性の飲酒習慣の増加や肥満率の上昇により、特に60歳未満の若年層で男女差が徐々に縮小しつつあることも指摘されています。今後は、性別を問わず肝炎ウイルスのキャリア検査や生活習慣改善、定期的な肝機能・画像検査の徹底が、一層重要となってきています。
肝臓がん患者さんの在宅療養を支える訪問看護・訪問リハビリテーション
肝臓がんの治療を終えて退院された後、あるいは再発・進行によって通院が困難になった場合でも、患者さんが住み慣れたご自宅で安心して療養を続けるには、医療的かつ生活的な支援を両立できる体制が不可欠です。その中核となるのが「訪問看護」と「訪問リハビリテーション」です。
これらのサービスは、身体的苦痛の緩和、栄養・生活機能の維持、精神的支援、さらにはご家族の介護負担軽減にもつながる、在宅医療の大きな柱となります。
訪問看護の役割:術後ケア、症状緩和、栄養・心理的支援
症状管理と術後のケア
訪問看護師は、肝臓がん手術後の患者さんが抱えるさまざまな身体的負担を軽減し、日常生活への影響を最小限に抑えるためにきめ細やかなケアを提供します。結腸や直腸の切除術後には、排便リズムの乱れや下痢・便失禁、ストーマ装具による皮膚トラブルなどが起こりやすく、これらの症状を医師の指示に従って観察し、適切なスキンケアや排便トレーニングを通じて排便機能の安定を図ります。
また、抗がん剤治療中には吐き気や倦怠感、手足のしびれといった副作用に対して薬剤管理を行い、必要に応じて緩和ケアの視点から疼痛コントロールや呼吸苦緩和の援助を行うことで、快適な療養環境づくりを支援します。
● 栄養管理と経管栄養サポート
栄養管理においては、消化吸収機能の低下や食欲不振によって低栄養に陥りやすい肝臓がん患者さんの状態を把握し、管理栄養士や医師と連携して食事形態の工夫や補助栄養食品の導入を提案します。経口摂取が難しい場合には胃ろうや中心静脈栄養、輸液ポートを用いた栄養補給にも対応し、脱水や体重減少の予防に努めることで、治療効果を支える体力の維持を図ります。
● 精神的ケアとACP(人生会議)の支援
患者さんとご家族が抱える精神的な不安にも寄り添い、訪問看護師は信頼できる相談相手としてその心情を傾聴します。進行期や終末期には疼痛や呼吸困難への不安が強まるため、安楽な体位の提案や痛みを緩和する援助を行うだけでなく、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を通じて「どのように最期を迎えたいか」というご本人とご家族の思いを尊重した話し合いの場を設け、生き方や治療方針を共に考える支援を行います。こうした医療的・生活的・心理的ケアを総合的に提供することで、訪問看護は肝臓がん患者さんの在宅療養を支える要となるのです。
訪問リハビリテーションの内容:体力維持と生活再建の支援
● 理学療法(PT):体力・機能維持の支援
訪問リハビリテーションでは、まず理学療法士が肝臓がん手術後に起こりやすい体重減少や全身の筋力低下、倦怠感に着目し、患者さんの身体機能を維持・回復するための運動プログラムを提案します。具体的には、廃用症候群を防ぐための筋力強化訓練やバランス訓練を通じて、歩行や立ち上がりなど基本的な動作の自立性を高める支持を行います。
また、腹部の手術痕周辺にかかる負担を軽減しながら呼吸筋を鍛える呼吸リハビリテーションや、お腹にかかる痛みを緩和する徒手アプローチ、杖や歩行器などの福祉用具選定のアドバイスも行い、ご自宅での安全な移動と活動範囲の拡大をサポートします。
● 作業療法(OT):日常生活の再構築
作業療法士による支援では、排便リズムの乱れやストーマ装具の扱いに伴う日常動作の課題に焦点を当て、ご本人が“自分らしい生活”を取り戻せるよう手助けします。たとえば、洋服の着替えやトイレ動作、台所での調理など、具体的な家事動作を練習しながら自助具の使い方を指導し、手すりの設置や動線の見直しといった住環境の改善提案を行います。こうした取り組みによって、患者さんは身体的制限を乗り越え、安心して日常生活を送るための自信と技術を身につけることができます。
● 社会参加と心理的回復の促進
さらに、在宅での療養生活における心の支えとして、リハビリ専門職は社会参加や趣味活動の再開を後押しします。肝臓がん治療後は外出機会が減りがちですが、近隣のウォーキングや体操教室への参加、オンラインサロンでの交流など、患者さんの興味や体調に合わせた活動プランを個別に提案します。
こうした“できること”を増やす経験を通じて、自尊心の回復や孤立感の軽減が促進され、身体機能だけでなく心の回復にもつながるのです。
多職種連携によるチームアプローチの重要性
肝臓がん患者さんの在宅療養をより質の高いものにするためには、訪問看護師やリハビリ専門職だけでなく、主治医、薬剤師、管理栄養士、ケアマネジャー、訪問介護など、様々な専門職がそれぞれの専門性を活かし、情報を共有しながらチームとして患者さんとご家族を支える「多職種連携」が不可欠です 。
肝臓がんの患者さんは、医療的な問題だけでなく、食事や栄養、日常生活動作、精神的な問題、経済的な問題、介護の問題など、多岐にわたる複雑なニーズを抱えています。これらのニーズに対して、一人の専門職だけで対応することは困難です。それぞれの専門職が持つ知識や技術を結集し、共通の目標に向かって協力することで、より包括的で質の高いケアを提供することが可能になります。
効果的な多職種連携のためには、チーム内での定期的なカンファレンス(合同会議)の開催や、電子カルテなどの情報共有ツールを活用した、円滑なコミュニケーションが重要です 。ケアマネジャーや訪問看護師などが中心となり、各専門職間の調整役を担うことも、チームアプローチを円滑に進める上で大切なポイントとなります。
訪問サービスの導入プロセスとケアプラン作成
訪問看護や訪問リハビリテーションといった在宅サービスは、多くの場合、入院中の病院の医師や看護師、医療ソーシャルワーカーからの紹介、あるいは地域のケアマネジャーを通じて導入の手続きが進められます。退院が近づくと、病院のスタッフと在宅サービスの担当者が集まり、患者さんの情報共有や退院後の療養生活について話し合う「退院前カンファレンス」が開催されることもあります 。これにより、入院中から在宅療養へのスムーズな移行を目指します。
在宅サービスの利用が開始されると、まず訪問看護師やリハビリ専門職が患者さんのご自宅を訪問し、全身状態、日常生活の状況、ご本人やご家族の意向などを詳細に把握するためのアセスメント(評価)を行います。このアセスメント結果に基づいて、個別のケアプラン(看護計画やリハビリテーション計画)が作成されます。このケアプランは、画一的なものではなく、患者さん一人ひとりの目標やニーズに合わせてオーダーメイドで作成され、定期的にその効果が評価され、必要に応じて見直しや調整が行われます。このように、患者さんとご家族が主体的に関わりながら、その時々の状況に最も適したケアが提供されるよう努められます。
専門的な訪問サービスを活用し、早期発見・的確な治療後も、安心して在宅療養が続けられる体制を整えましょう。
大田区鵜の木の訪問看護・訪問リハビリ ─ 大田ケア訪問看護ステーション
大田ケア訪問看護ステーションでは、肝臓がんの治療後や再発・進行期にある患者さんが、ご自宅で自分らしく療養生活を送ることができるように、訪問看護師とリハビリ専門職が連携して支援を行っています。
私たちの強みは、ご利用者さまのわずかな体調や食欲の変化、生活リズムの変動を丁寧に見逃さずキャッチし、必要な支援をすぐにご家族と共有できる体制を整えている点にあります。栄養管理、症状緩和、体力維持のリハビリを軸に、ご家族とチームで在宅ケアを進めています。
がんの緩和ケアの土台は「対話による心のつながり」
肝臓がんのご利用者さんにとって、術後の体調変化や栄養障害、不安感は避けて通れないものです。大田ケアの訪問看護師は、患者さんの体調や精神状態だけでなく、食事摂取状況や栄養状態、排便・水分バランスまで細やかに観察し、必要に応じてケアプランを柔軟に調整します。
リハビリスタッフも、ご利用者さんの「日常生活を少しでも快適に送りたい」「体力を取り戻したい」といった目標の達成に向けた支援内容を、常にご家族と共有。その過程で、ご家族も「ケアチームの一員」として主体的に関わることができるようになります。
24時間365日対応可能な安心の連絡体制
大田ケアでは、緊急時にも対応できるよう24時間365日体制の連絡窓口を完備。たとえば、胃瘻のトラブルや急な嘔吐・下痢、脱水が懸念される場合にも、専門の看護師が迅速に受診先の案内や応急処置のアドバイスを行います。
訪問開始時に、緊急時の対応フローを事前にご家族へ明確に説明し、夜間や休日にも慌てず冷静に行動できるようサポートします。
ご家族も安心して関われるケアの仕組み
訪問スケジュールやケアプランの内容については、ご利用者さんの生活スタイルやご家族の都合を丁寧に伺いながら調整。ご家族が果たす役割も明確にし、「無理なく・安心して支えることができる」体制づくりを目指します。
連絡ノートの活用や訪問時の対話を通じて、ご利用者さん・ご家族・専門職チームとの間に一貫性のあるケアを構築。生活の中で気になる点や変化にもすぐに対応できる、柔軟で親身なサポートを提供します。
「自分らしく、生きる」を一つひとつ増やす
肝臓がんの療養生活では、「食べること」「動くこと」「人と話すこと」が失われがちですが、大田ケアでは、そうした日常の一つひとつを大切に支えています。訪問看護と訪問リハビリが連携し、患者さんの「その人らしさ」を尊重しながら、自宅で安心して過ごせる日々を創造します。
「治療が終わったけど食事に不安がある」「体力が戻らなくて外に出るのが億劫」「家族がどうサポートすればいいか分からない」──そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。大田ケアのチームが、一緒にその一歩を支えてまいります。
FAQ:よくある疑問にQ&A形式で回答
Q. 訪問看護サービスを利用するにはどうすればよいですか?
A. ご利用を希望される場合は、まずかかりつけ医または地域包括支援センターや居宅介護支援事業所を通じて要介護認定の申請を行ってください。要介護認定がおりた後、ケアマネジャーがケアプランを作成し、そのプランに基づいて大田ケア訪問看護ステーションがサービスを提供します。直接当ステーションにご連絡いただいても手続きの流れをご案内できますので、お気軽にお問い合わせください。
Q. 週に何回、何時間利用できますか?
A. 訪問看護の頻度や時間は、ケアプランで決定します。通常は週に1~3回、1回あたり30分から90分程度が目安ですが、症状の度合いやご家族のご希望によって柔軟に調整可能です。リハビリテーションを中心に行う場合や症状管理が多い場合は、より頻度が増えることもあります。
Q. 料金の自己負担はいくらですか?
A. 介護保険をご利用の場合は、要介護度に応じて自己負担が原則1〜3割となります。医療保険適用の訪問看護では、医師の指示で行う注射や点滴なども保険診療としてカウントされ、ご負担額は医療保険の自己負担割合に準じます。詳しい費用については、個別性があるのですが、1割負担の方で60分訪問1000円ぐらいと考えておくとわかりやすいです。
Q. 24時間対応は可能ですか?
A. 大田ケアでは夜間・休日のオンコール体制を整えており、急な痛みの悪化や呼吸困難などの緊急事態にも電話でのご相談を受け付けています。緊急度が高いと判断した場合は、訪問看護師が緊急訪問を行い、一次的な対応を実施します。
Q. 訪問リハビリテーションはどのような内容ですか?
A. がん治療に伴う筋力低下や関節可動域制限、呼吸機能の低下を軽減するための運動プログラムを提供します。ベッド上で行う抗重力運動や呼吸リハビリ、リンパ浮腫ケアを組み合わせ、患者さんの体調に合わせて無理なく継続できる方法をご提案します。
Q. 自宅に必要な福祉用具はどう手配すればよいですか?
A. ケアマネジャーと連携し、手すりやスロープ、ポータブルトイレ、シャワーチェアなどの福祉用具を介護保険サービスでレンタルできます。大田ケアのスタッフがご自宅を訪問して適切な配置や使い方をアドバイスし、安心・安全な環境づくりをサポートします。
Q. 医師との連携はどのように行われますか?
A. 訪問看護師は定期的にバイタルサインを記録し、症状の変化を詳細に把握して医師に報告します。必要に応じて医師の指示を取り付け、薬剤の調整や注射管理を行うほか、電話やオンラインでの迅速な連絡体制を整えています。
Q. 心理的なサポートも受けられますか?
A. 看護師が日常的な会話を通じて不安や悩みを傾聴し、必要に応じて心理士や専門カウンセラーと連携したグリーフケアやスピリチュアルケアをご提案します。ご家族へのサポートも重視し、介護負担や経済的な不安についても適切な制度やサービスを紹介します。
Q. アドバンス・ケア・プランニング(ACP)はどのように進めますか?
A. ACPでは、医師が予後予測を説明し、延命治療の希望や最期の過ごし方について患者さんの意思を整理します。大田ケアのチームもその意思が尊重されるようサポートします。
Q. 申し込み後、どのくらいで訪問が始まりますか?
A. ケアプランが確定し、必要書類が整い次第、通常は1週間以内に初回訪問を設定します。急ぎの場合は調整してより早い開始も可能ですので、ご希望があればご相談ください。
情報源・出典元データなど
専門機関
- 世界保健機関(WHO)palliative care fact sheet
- 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」
- 日本緩和医療学会 ガイドラインページ
- 厚生労働省「緩和ケアの推進」ページ/第4期がん対策推進基本計画
- NCCN Guidelines® Palliative Care(2024年版)
- 公益財団法人 日本訪問看護財団
学術論文
- アドバンス・ケア・プランニング(ACP)に関する看護研究(J-STAGE)
- Patient-Controlled Analgesia in Palliative Care: Exploratory Scoping Review(2025)
- 在宅ホスピスにおける家族介護者の負担研究(J-HOPE)
- Mindfulness in End-of-Life Care(2024, Sciencedirect)
- Resilience-Building in Palliative-Care Professionals: Scoping Review(BMJ Supportive & Palliative Care 2025)
その他、Webサイト
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大田ケアのコンテンツが、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
大田ケア訪問看護ステーション
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