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肺がんの基礎知識と訪問看護・訪問リハビリテーション(がんリハ)

肺がんの訪問看護・訪問リハビリテーション(がんリハ)

肺がんとは:基本的な知識と理解

肺がんと診断された方、あるいはその疑いがある方にとって、まずはこの病気の特徴を正しく理解することが大切です。肺がんがどのような病態で、どのようなタイプがあるのかを知ることは、最適な治療法を選択し、今後の療養生活やリハビリプランを考える上での第一歩となります。

肺がんの主なタイプ

肺がんは大きく「非小細胞肺がん(NSCLC)」と「小細胞肺がん(SCLC)」の2種類に分けられ、それぞれ治療方針や進行の仕方に特徴があります。

非小細胞肺がん(NSCLC)

非小細胞肺がん(NSCLC)を構成する主なタイプとしては、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんが挙げられます。腺がんは日本で最も多く見られ、全体の約六割を占めることからもその存在感は大きいといえます。扁平上皮がんはかつて喫煙との関連性が強いとされたタイプで、NSCLC全体の約二割を占めています。こちらは気管支に近い部位に発生しやすく、血痰や閉塞性肺炎を引き起こしやすい特徴があります。大細胞がんは他の二つに比べると稀ですが、腫瘍細胞の分化度が低くサイズも大きいため、発見時にはすでに進行していることが多い点に注意が必要です。

肺がんのリスク要因として最も強く挙げられるのが喫煙であり、肺がん全体のおよそ七割以上に喫煙が関与しているとされます。とりわけ扁平上皮がんや小細胞肺がんでは喫煙歴との結び付きが顕著であり、喫煙量の増加に比例して発症リスクも高まることが確認されています。さらに、家庭内や職場での受動喫煙も無視できない要因であり、周囲のタバコ煙を長期間吸い込むことで非喫煙者の肺がんリスクが上昇することが明らかになっています。また、大気汚染物質やPM2.5への慢性的な曝露が非喫煙者における肺がんリスクを高めるという報告もあり、都市部や工業地帯での環境管理の重要性が指摘されています。そのほか、アスベストやラドンガス、遺伝的素因などが発症に影響を及ぼすこともあり、複数の要因が絡み合って肺がんのリスクを形成していることがわかります。

小細胞肺がん(SCLC)

小細胞肺がんは、肺がん全体の約10~15%を占める比較的希少なタイプですが、その特徴は驚くほどの増殖速度と転移の速さにあります。多くの場合、診断時にはすでに全身への転移が進行しているため、手術療法よりも抗がん剤治療や放射線療法が中心となることが一般的です。

この小細胞肺がんの最大のリスク要因は喫煙にあり、ほぼすべての患者さんに喫煙歴が認められます。しかも、その喫煙量が多いほど発症リスクは高まることが明らかになっており、強い喫煙関連性があるがんとして知られています。

転移しやすい肺がん

肺がんは、肺自体のリンパ管や血管が豊富であるため、比較的早期から他臓器へ転移しやすい傾向があります。

主な転移先

  • 脳:転移性脳腫瘍を起こしやすく、頭痛やしびれ、認知機能障害を招くことがあります。
  • 骨:骨に転移すると、疼痛や骨折、脊髄圧迫症状(四肢麻痺など)の原因となります。
  • 肝臓:黄疸や腹水を伴うことがあり、全身倦怠感を強く感じやすくなります。
  • 副腎:無症候性のこともありますが、検査で偶然見つかる場合もあります。

これらの理由から、たとえ早期発見や手術適応であっても、広範囲のリンパ節郭清や補助化学療法、さらには全身管理を含めたリハビリテーション(呼吸リハ、筋力維持、QOL向上)を計画的に組み込むことが重要です。

もしかして?肺がんの初期症状チェックと進行時のサイン

肺がんは、早期の段階では自覚しにくい症状が多いため、気づかないうちに進行してしまうことが少なくありません。それでも、どの病気も早期発見・早期治療が改善への鍵を握っていることに変わりはありません。ここでは、肺がんのごく初期にあらわれるかもしれない違和感や、がんが進行したときに顕著になるサインについてご紹介します。

気づきにくい肺がんの初期症状

初期の肺がんでは、しつこい咳が続いても風邪と区別がつかず、わずかな息切れや胸の奥の違和感も見過ごされがちです。たとえば、以前は感じなかった痰に血が混じるようになったり、呼吸を深くすると胸の奥がチクチクと痛んだりすることがあります。

こうした症状が断続的に現れては治まり、またぶり返すようであれば、ただの疲れや風邪の悪化ではなく、専門医の受診を検討したほうがよいでしょう。特に長年の喫煙習慣や受動喫煙の機会があった場合には、ほんの小さなサインでも決して軽視できません。

以下の項目に当てはまるものがあれば、肺がんの早期発見のために専門医への受診を検討してください。特に喫煙や飲酒習慣のある方、ご高齢の方は要注意です。チェックリストとしてご活用ください。

肺がんの初期症状チェックリスト

  • しつこい咳が続く
  • 息切れや動作時の呼吸困難を感じる
  • 血の混じった痰(血痰)が出る
  • 胸の奥にチクチクとした違和感や軽い痛みを覚える
  • 深呼吸や横になると胸部の痛みが強まる
  • 原因不明の体重減少や食欲不振が見られる
  • 声がかすれる(嗄声)が続く
  • 慢性的な疲労感や倦怠感が抜けない
  • 長引く微熱や発熱を伴うことがある

がんが進行した場合に現れる症状

肺がんが進行して腫瘍が大きくなると、呼吸困難や持続的な胸痛が現れるようになります。腫瘍が気道を狭めることで動くたびに息が苦しくなり、やがては固形物を飲み込むことが難しくなる食道がんとは異なり、肺がんの場合は酸素が十分に取り込めないため日常生活で著しい体力低下や倦怠感を伴うのが特徴です。

また、がんが胸郭の周囲組織に浸潤すると、背中や肩にまで響くような痛みを感じることがあり、がんが声帯神経にまで広がると声のかすれや嗄声が現れることもあります。さらに、がんが全身に転移すると骨の痛み、脳転移による頭痛やしびれ、肝転移による黄疸といった多彩な症状があらわれることになります。

これらの症状は、がんが肺という臓器を超えて全身に影響を及ぼしているサインであり、放置すると栄養状態の悪化や体力の著しい低下につながります。実際に、早期のステージでは5年生存率が高水準を保つ一方で、遠隔転移を伴うステージIVではその数字が大きく低下し、平均余命も数か月程度にとどまるケースが少なくありません

したがって、もし「しつこい咳が続く」「胸や背中に違和感がある」「原因不明の体重減少を感じる」といった症状があれば、速やかに専門医の診察を受け、必要に応じて画像検査や気管支鏡検査を受けるよう強くおすすめします。早期の検査と診断が、その後の治療成績を左右する大切な一歩となるでしょう。

肺がんの原因とリスク要因:ストレスは関係する?

肺がんの発生には、様々な要因が複雑に関与していると考えられていますが、その中でも特に重要な危険因子がいくつか特定されています。これらのリスク要因を理解し、可能な範囲で避けることが、肺がんの予防に繋がります。

肺がんの原因とリスク要因チェックリスト

  • 喫煙(能動喫煙):肺がん全体の約7割以上に関与し、喫煙本数や喫煙年数の増加とともにリスクが上昇します
  • 受動喫煙(副流煙):家庭内や職場などで他人のたばこの煙を長期間吸い込むこともリスク要因となります
  • 大気汚染・PM2.5:自動車排気ガスや工業排煙に含まれる微小粒子状物質への慢性的曝露が、非喫煙者の肺がんリスクを高めると報告されています
  • アスベスト:建築材料や断熱材として使用されてきたアスベストの粉じんを吸い込むことで、肺がんや中皮腫のリスクが増加します
  • ラドンガス:住宅や地下空間に自然発生するラドンが屋内にたまり、長期間吸入すると肺がんの原因となることがあります
  • 職業性曝露:ベリリウム、クロム、ニッケル、シリカ粉じんなど特定の化学物質や鉱物粉じんへの曝露歴がリスクを高めます
  • 遺伝的要因・家族歴:家族に肺がん患者がいる場合、遺伝的感受性や生活環境の共通要素が影響する可能性があります
  • 既往の肺疾患:肺結核や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの既往歴があると、後の肺がん発症リスクが高まることがあります
  • 年齢・性別:50歳以上でリスクが増加し、女性の非喫煙性肺がんが増えていることにも注意が必要です
  • 放射線療法歴:過去に胸部に放射線治療を受けた経験がある場合、後年に肺がんを発症するリスクがわずかに上昇します

男性の肺がん、女性の肺がん:性別による違い

罹患率と死亡率の男女差

肺がんは、男女を問わずがん死亡の主要な原因となっていますが、その罹患数や死亡数には明らかな男女差が存在します。2017年の日本における罹患数を見てみると、男性では約86,800人が肺がんと診断された一方で、女性では約43,100人にとどまり、男性の患者数が女性のほぼ2倍にのぼることが分かります 。

この大きな差は、歴史的に男性の喫煙率が女性よりも高かったことを反映しており、その結果として男性の罹患リスクが相対的に高く推移しているのです。

死亡数についても同様に男性が上回っており、肺がんは2019年時点で男女ともに最も多いがん死亡原因であるものの、男性の死者数は女性に比べて依然として多く報告されています。

男女で注意すべきリスク要因の違い

近年では、女性における喫煙率の増加や環境因子への曝露が影響し、女性の肺がん罹患率・死亡率も緩やかに上昇する傾向が指摘されています。このように、性別による差は依然として大きいものの、ライフスタイルや環境の変化に伴って女性のリスクも見逃せない水準に達してきているため、男女を問わず定期的な検診や早期受診の重要性が高まっていると言えるでしょう。

肺がんの最も顕著な特徴の一つは、男性に圧倒的に多く発症するということです。日本の統計データによると、肺がんと診断される人の数(罹患数)も、肺がんで亡くなる人の数(死亡数)も、男性は女性の約4倍から6倍にものぼると報告されています 。例えば、2018年の罹患数は男性約2万人に対し、女性は約4千人でした 。この大きな男女差は、肺がんの主要なリスク要因である喫煙と飲酒の習慣が、歴史的に男性においてより高かったことと深く関連していると考えられています。生活習慣におけるリスクへの曝露量の差が、そのまま罹患率の差として現れていると言えるでしょう。

いずれにしても、性別に関わらず、肺がんのリスク要因を理解し、健康的な生活習慣を心がけることが重要です。

肺がんに似ている症状と間違えやすいポイント:症状と検査

胸焼けや胸のつかえ感といった症状は、比較的よくみられるものですが、その原因が逆流性食道炎なのか、あるいはもっと深刻な肺がんのサインなのか、ご自身で判断することは非常に難しいです。ここでは、両者の症状の類似点と相違点について解説します。

肺がんの初期症状は特異性に乏しく、咳や息切れ、胸部不快感といった症状は他の多くの呼吸器疾患や心臓病でもしばしば見られるため、医療現場でも診断が難航しがちです。たとえば、長引く咳や痰、胸の圧迫感は慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息、あるいは気管支炎でも生じる典型的な症状であり、これらの疾患と区別がつかないまま対症療法が続けられることがあります 。

特に喫煙歴のある患者では、慢性気道炎症と肺がんの症状が重なりやすく、胸部X線検査で小さな腫瘤を見落としてしまう例も珍しくありません。

また、肺炎や結核といった感染症も診断の大きな落とし穴となります。肺がんでは咳嗽や発熱、喀痰中の血液といった症状が見られることがあり、これが細菌性肺炎の治療に反応しないことで初めて異常を疑われるケースがしばしば報告されています。さらには、心不全による肺うっ血が胸部不快感や呼吸困難を引き起こし、心臓病と誤診される例もあるため、詳細な病歴聴取と胸部CTや気管支鏡、生検など多角的な検査が欠かせません。

こうした診断の難しさを乗り越えるには、症状が改善しない場合や画像所見に説明のつかない陰影がある場合に追加検査を行うことが重要です。特にCT検査は小さな結節の描出能に優れ、経過観察だけでは見逃されがちな早期肺がんの発見に大きく貢献します。

肺がん特有の「警告症状」とは

肺がんに特有の警告症状として最も警戒すべきは、まず何よりも長引く血痰や喀血です。たとえば、いつもの咳が止まらず、痰に赤い血が混じるようになったときは、単なる気管支炎や風邪の範疇を超えた異常と考えるべきです。

次いで、説明のつかない体重減少や食欲不振が続く場合には、がんの全身への影響による代謝異常が疑われます。さらに、胸部に鋭い痛みを感じたり、呼吸をすると胸の奥で刺すような痛みが走ったりするのも見逃せません。これは腫瘍が胸膜や肋骨周辺に浸潤している可能性を示唆しますし、声のかすれは反回神経ががんによって圧迫されているサインとして重要です。

これらの警告症状はいずれも、たとえ慢性的な咳や息切れとセットであっても、通常の喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、あるいは一過性の気管支炎とは明らかに異なる兆候です。もし、こうした症状がひとつでも現れたときには、自己判断による対症療法を続けるのではなく、速やかに呼吸器内科やがん専門医のもとで精密検査を受けることが強く勧められます。早期に胸部CTや気管支鏡検査を行うことが、その後の治療成績を大きく左右する決め手となるでしょう。

肺がん患者さんの在宅療養を支える訪問看護と訪問リハビリテーション

肺がん患者さんの場合、呼吸機能の低下やがん性疼痛、化学療法や放射線治療の副作用によって、日常生活における身体的苦痛や不安が一層深刻になりがちです。そこで訪問看護師は、在宅酸素療法の適切な管理と吸入薬の自己注入支援を通じて、呼吸苦の軽減に努めます。同時に、胸部リンパ浮腫の予防や排痰を助けるための胸郭運動指導を行い、痰がたまりにくい体位の工夫や、理学療法士等と連携し、呼吸筋リラクゼーションなどの理学療法的アプローチを組み合わせることで、呼吸循環機能の維持に取り組みます。

訪問看護の役割:症状管理、栄養サポート、精神的ケア

訪問看護師は、医師の指示に基づき、患者さんのご自宅を定期的に訪問し、多岐にわたる看護ケアを提供します。肺がんの患者さん特有のニーズに応じた、専門的なサポートが期待できます。

症状管理としては、お身体の状態を観察し、服薬状況の確認、水分摂取量の確認などを行います。また上にあげたように、在宅酸素療法の適切な管理と吸入薬の自己注入支援を通じて、呼吸苦の軽減に努め、胸郭運動指導を行い、痰がたまりにくい体位の工夫などにより、呼吸循環機能の維持に取り組みます。

栄養面では、息苦しさや倦怠感のために食事量が減少しやすい点を踏まえ、少量でも高エネルギー・高たんぱくの食事とれるようにします。たとえ咳き込みがあっても、誤嚥を防ぐために食形態の工夫を行うほか、口腔ケアにも力を入れて呼吸器系感染症のリスクを抑えることが重要です。また、治療薬による消化器症状や味覚障害が出た場合には、痛み止めや制吐剤の管理をはじめ、患者さんの苦痛を少しでも和らげるためのケアを丁寧に行います。

精神的ケアでは、肺がんと共に生きる不安や、呼吸困難による閉塞感からくるパニック症状に対し、訪問看護師がじっくりと話を聞きながら、呼吸法指導やリラックス法を提供します。家族にもケアのポイントを共有することで、患者さんを支える環境を整え、介護者の負担感を和らげることも訪問チームの重要な役割です。

時には、意思決定の支援や、人生の最終段階におけるケア(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)に関する話し合いの場を設けることもあります。訪問看護師は、患者さんとご家族が直面する精神的な課題に対し、単に医療的なケアを提供するだけでなく、信頼できる相談相手として、その人らしい生き方を支える存在となることを目指します。

これらに加え、訪問看護師は、症状の変化や治療の副作用の有無などを継続的にアセスメントし、その情報を主治医や他の医療専門職と共有することで、異常の早期発見と迅速な対応に努めます。

訪問リハビリテーションの内容:肺がんのがんリハ

訪問リハビリテーションとは、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)といったリハビリ専門職が患者さんのご自宅を訪れ、ご本人の呼吸機能や体力、生活環境に合わせたプログラムを提供するサービスです。肺がん患者さんにとっては、手術後や化学療法・放射線療法の副作用で呼吸力や筋力が低下しやすいため、自宅で少しずつでも機能を回復し、自立した生活を維持していくうえで、訪問リハビリは欠かせない支援となります。

訪問リハビリテーションでは、呼吸リハビリと並行して筋力トレーニングや日常動作練習を取り入れ、座位や立位の保持練習、階段昇降のなどを通じて基本的な活動能力の維持・向上を図ります。患者さんがご自宅で安全に移動やトイレ動作を行えるようになることで、自立度を高めると同時に、転倒や骨転移による骨折リスクの軽減にもつながります。

理学療法士はまず、呼吸筋を効果的に鍛えるためのエクササイズを実施するとともに、吐き気を伴う咳や痰の排出を助ける技術を指導します。同時に、座位、立ち上がりや歩行の練習を通じて日常動作を丁寧にサポートし、転倒予防や骨転移による骨折リスクの軽減にも配慮します。また、家具の配置や手すりの設置といった住環境の調整を提案し、急な息苦しさや疲労時にも安全に過ごせる住まいづくりをサポートします。

作業療法士は、呼吸苦を感じながらもできる範囲での家事動作や身の回りの動作を再獲得できるよう支援します。例えば、台所仕事や掃除、トイレや更衣動作といった生活動作を、呼吸が乱れにくい体位や動作順序に工夫しながら練習することで、息切れの不安を減らし、日常生活に自信を取り戻せるように働きかけます。

言語聴覚士は、肺がん治療による咳や息つぎの影響で発声や会話が苦しくなった患者さんに対し、声の出し方や話すタイミングを整える練習を行います。化学療法で口腔内の粘膜が弱まった場合には、嚥下反射をスムーズに保つための軽い嚥下体操や、会話中の休息タイミングの取り方をアドバイスし、言葉によるコミュニケーションがストレスなく行えるよう支援します。これにより、肺がん患者さんが不安を和らげながら家族や地域との関わりを続けることを支援します。

訪問リハビリテーションは、患者さん一人ひとりの状態や生活環境、そして「こうありたい」という希望に合わせて、個別性の高いプログラムが提供されるのが特徴です。専門職による適切な介入が、患者さんの機能回復とQOL向上に大きく貢献することを目指しています。

多職種連携によるチームアプローチの重要性

肺がん患者さんの在宅療養をより質の高いものにするためには、訪問看護師やリハビリ専門職だけでなく、主治医、薬剤師、管理栄養士、ケアマネジャー、ホームヘルパーなど、様々な専門職がそれぞれの専門性を活かし、情報を共有しながらチームとして患者さんとご家族を支える「多職種連携」が不可欠です 。

肺がんの患者さんは、医療的な問題だけでなく、食事や栄養、日常生活動作、精神的な問題、経済的な問題、介護の問題など、多岐にわたる複雑なニーズを抱えています。これらのニーズに対して、一人の専門職だけで対応することは困難です。それぞれの専門職が持つ知識や技術を結集し、共通の目標に向かって協力することで、より包括的で質の高いケアを提供することが可能になります。例えば、在宅ホスピス緩和ケアチームにおいては、患者・家族のニーズに応じて複数の事業所から医療・介護サービスが提供され、ケアマネジャーやソーシャルワーカーもチームに参加することが要件として挙げられています。

訪問サービスの導入プロセスとケアプラン作成

訪問看護や訪問リハビリテーションといった在宅サービスは、多くの場合、入院中の病院の医師や看護師、医療ソーシャルワーカーからの紹介、あるいは地域のケアマネジャーを通じて導入の手続きが進められます。退院が近づくと、病院のスタッフと在宅サービスの担当者が集まり、患者さんの情報共有や退院後の療養生活について話し合う「退院前カンファレンス」が開催されることもあります。これにより、入院中から在宅療養へのスムーズな移行を目指します。

在宅サービスの利用が開始されると、ケアマネジャーによって、個別のケアプラン(看護計画やリハビリテーション計画)が作成されます 。このケアプランは、画一的なものではなく、患者さん一人ひとりの目標やニーズに合わせてオーダーメイドで作成され、定期的にその効果が評価され、必要に応じて見直しや調整が行われます。このように、患者さんとご家族が主体的に関わりながら、その時々の状況に最も適したケアが提供されるよう努められます。

ご家族ができること:患者さんを支えるための実践的・精神的サポート

日常生活のサポートと環境調整

患者さんが安心して快適な在宅療養を送るためには、ご家族による日常生活のサポートと、療養環境の調整が大切です。

肺がんの患者さんにとって、在宅療養中の食事準備は呼吸負担を最小限にしながら栄養をしっかり補うためにきめ細かな配慮が必要です。まず、息苦しさで食事に集中しづらい場合には、食事の前に在宅酸素を用いるか、あるいはゆっくり深呼吸を数回行ってから食卓に向かうと、食べ始めの呼吸が楽になります。たとえ一度にたくさんは食べられなくとも、エネルギーとたんぱく質を豊富に含む小分けのプレートを用意し、少量ずつ回数を分けて口に運ぶことで、食事全体の摂取量を確保しやすくなります。

また、化学療法や放射線治療による味覚障害や食欲不振がみられる場合には、患者さんが好む風味を生かした調理方法を工夫するとよいでしょう。例えば、咳を誘発しにくい柔らかい食材を使い、香り豊かなハーブやスパイスを軽く添えることで食事の楽しみを取り戻す一助になります。栄養バランスを維持するためには、市販の栄養補助ドリンクや高カロリー・高たんぱくのスナックを活用しつつ、訪問看護師や管理栄養士と連携しながら、その日の体調や呼吸状態に合わせたメニューの提案を受けると安心です。こうした細やかなサポートが、肺がん患者さんの体力低下を防ぎ、在宅での療養生活を支える大きな力となるでしょう。

その他、服薬管理の補助(薬の飲み忘れがないかの確認や、必要に応じて薬を準備するなど)、定期的な通院の付き添い身の回りの世話(入浴や排泄の介助など、患者さんの状態に応じて)なども、ご家族ができる大切なサポートです。

安全な住環境の整備も重要です。患者さんの体力や運動機能が低下している場合には、転倒のリスクが高まります。手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材への変更、室内の整理整頓による動線の確保など、転倒予防のための工夫を専門職の方に相談しながら検討しましょう。また、患者さんが日中過ごす場所や寝室を、できるだけ快適で安らげる空間に整えることも、精神的な安定に繋がります。

患者さんの状態に合わせて、無理のない範囲で日中の活動を促すことも大切です。例えば、体調が良い日には、一緒に散歩に出かけたり、軽い体操をしたりすることも、体力維持や気分転換に繋がります。ただし、無理強いはせず、患者さんのペースを尊重し、十分な休息が取れるように配慮することも忘れてはいけません。ご家族は、患者さんの日々の変化に気を配り、医療専門職と情報を共有しながら、最適なサポートを模索していくことが求められます。これらの実践的なサポートは、時に身体的・精神的に大きな負担となることもありますので、ご家族だけで抱え込まず、利用できるサービスを上手に活用することが重要です。

コミュニケーションの取り方と精神的な支え

肺がんという病気と向き合う患者さんにとって、ご家族からの精神的な支えは、何よりも大きな力となります。日々のコミュニケーションの中で、患者さんの気持ちに寄り添い、安心感を与えることが大切です。

まず、患者さんの話にじっくりと耳を傾けることから始めましょう。病気に対する不安、治療の辛さ、将来への心配など、患者さんは様々な想いを抱えています。その気持ちを否定したり、遮ったりせずに、まずは最後まで聴き、共感の姿勢を示すことが重要です。「頑張って」という言葉は、時に患者さんを追い詰めてしまうこともあります。むしろ、「辛いね」「大変だったね」といった共感の言葉の方が、患者さんの心に響くこともあります。

患者さん自身のペースや対処法を尊重することも大切です。病気との向き合い方は人それぞれです。無理に元気づけようとしたり、ご自身の価値観を押し付けたりするのではなく、患者さんが自分らしくいられるように、そっと見守る姿勢も時には必要です。

病気や治療について、患者さんと一緒に学び、理解を深めることも、精神的な支えに繋がります。正しい情報を共有することで、漠然とした不安が軽減され、治療にも前向きに取り組めるようになるかもしれません。

患者さんが安心して自分の感情を表出できるような雰囲気を作ることも心がけましょう。怒りや悲しみ、弱音といったネガティブな感情も、抑え込まずに表現できる環境は、心の健康を保つ上で非常に重要です。

介護者のストレスケアと相談窓口の活用

患者さんを支えるご家族は、ご自身の心身の健康を維持することも非常に大切です。「第二の患者」とも言われるように、介護者は大きなストレスや疲労を抱えがちです。介護者自身のケアを怠ると、共倒れになってしまう可能性も否定できません。

まず、自分のための時間を作り、意識的に休息を取ることを心がけましょう。趣味を楽しんだり、友人と話したり、リラックスできる時間を持つことが、ストレスの軽減に繋がります。十分な睡眠とバランスの取れた食事も、心身の健康を保つ基本です。

そして何よりも、一人で抱え込まず、周囲に助けを求めることが重要です。他の家族や親戚、友人などに協力をお願いしたり、悩みや愚痴を聞いてもらったりするだけでも、気持ちが楽になることがあります。また、医療専門職(医師、看護師、ソーシャルワーカーなど)や、がん相談支援センター、地域の相談窓口なども、専門的なアドバイスや情報提供、精神的なサポートを受けることができる貴重な存在です 。東京都健康長寿医療センター内のがん相談支援センターのように、専門の相談員が電話や面談で対応してくれる窓口もあります。

患者会や家族会といったサポートグループに参加することも、情報交換や悩み共有の場として有効です。同じような経験を持つ人々と繋がることで、孤独感が和らぎ、新たな気づきや勇気が得られるかもしれません。介護者自身が心身ともに健康でいることが、結果として患者さんへのより良いケアに繋がるということを忘れずに、利用できるサポートは積極的に活用しましょう。

大田ケア訪問看護ステーションにおける肺がんご利用者さま支援

大田ケア訪問看護ステーションでは、ご自宅で安心して療養ライフを送っていただくために、訪問看護師やリハビリ専門職チームとご家族が一体となってサポートを行う体制を整えています。私たちの強みは、ご利用者さまの毎日の変化を敏感にキャッチする訪問看護師と、機能回復を目指すリハビリ専門職が一丸となり、ご家族にも積極的に情報共有を行うことで、より質の高い在宅ケアを実現している点です。

がんの緩和ケアの土台は「対話による心のつながり」

大田ケアの訪問看護師は、ご利用者さまの身体的・精神的な状態だけでなく、生活環境やご家族のサポート状況まで丁寧に把握し、ご家族が気づきにくい細かな変化をいち早く察知します。その情報は、ケアプランを柔軟に見直すきっかけとなり、症状悪化の予防や早期対応につながる貴重な手がかりに。

リハビリスタッフも同様に、ご利用者さまの目標達成に向けた進捗状況を定期的にご家族へフィードバックし、一緒に最適なプログラムを組み立てていきます。これにより、ご家族も「ケアチームの一員」として、自信を持って日々のサポートに関わっていただけます。

24時間365日対応可能な連絡窓口を設置

また、大田ケアでは緊急時にも頼れる体制を整えており、24時間365日対応可能な連絡窓口を設置しています。夜間や休日にご利用者さまの容態が急変した場合でも、看護スタッフがすぐに対応方法や受診先をご案内。ご家族がいざというときにパニックにならず、落ち着いて行動できるよう、訪問開始時に詳しい連絡フローをお伝えしています。

「自分らしく、生きる」を一つひとつ増やす

大田ケア訪問看護ステーションは、「ご自宅での生活を大切にしながら、安心・安全なケアを受けたい」というすべてのご家族の想いに寄り添います。専門職が連携し、ご家族とも情報を共有し合うことで、よりきめ細やかで安心できる在宅療養を支えています。ぜひ、まずはお気軽にお問い合わせいただき、私たちのチームがどのようにサポートできるかをご実感ください。

FAQ:よくある疑問にQ&A形式で回答

Q. 訪問看護サービスを利用するにはどうすればよいですか?
A. ご利用を希望される場合は、まずかかりつけ医または地域包括支援センターや居宅介護支援事業所を通じて要介護認定の申請を行ってください。要介護認定がおりた後、ケアマネジャーがケアプランを作成し、そのプランに基づいて大田ケア訪問看護ステーションがサービスを提供します。直接当ステーションにご連絡いただいても手続きの流れをご案内できますので、お気軽にお問い合わせください。

Q. 週に何回、何時間利用できますか?
A. 訪問看護の頻度や時間は、ケアプランで決定します。通常は週に1~3回、1回あたり30分から90分程度が目安ですが、症状の度合いやご家族のご希望によって柔軟に調整可能です。リハビリテーションを中心に行う場合や症状管理が多い場合は、より頻度が増えることもあります。

Q. 料金の自己負担はいくらですか?
A. 介護保険をご利用の場合は、要介護度に応じて自己負担が原則1〜3割となります。医療保険適用の訪問看護では、医師の指示で行う注射や点滴なども保険診療としてカウントされ、ご負担額は医療保険の自己負担割合に準じます。詳しい費用については、個別性があるのですが、1割負担の方で60分訪問1000円ぐらいと考えておくとわかりやすいです。

Q. 24時間対応は可能ですか?
A. 大田ケアでは夜間・休日のオンコール体制を整えており、急な痛みの悪化や呼吸困難などの緊急事態にも電話でのご相談を受け付けています。緊急度が高いと判断した場合は、訪問看護師が緊急訪問を行い、一次的な対応を実施します。

Q. 訪問リハビリテーションはどのような内容ですか?
A. がん治療に伴う筋力低下や関節可動域制限、呼吸機能の低下を軽減するための運動プログラムを提供します。ベッド上で行う抗重力運動や呼吸リハビリ、リンパ浮腫ケアを組み合わせ、患者さんの体調に合わせて無理なく継続できる方法をご提案します。

Q. 自宅に必要な福祉用具はどう手配すればよいですか?
A. ケアマネジャーと連携し、手すりやスロープ、ポータブルトイレ、シャワーチェアなどの福祉用具を介護保険サービスでレンタルできます。大田ケアのスタッフがご自宅を訪問して適切な配置や使い方をアドバイスし、安心・安全な環境づくりをサポートします。

Q. 医師との連携はどのように行われますか?
A. 訪問看護師は定期的にバイタルサインを記録し、症状の変化を詳細に把握して医師に報告します。必要に応じて医師の指示を取り付け、薬剤の調整や注射管理を行うほか、電話やオンラインでの迅速な連絡体制を整えています。

Q. 心理的なサポートも受けられますか?
A. 看護師が日常的な会話を通じて不安や悩みを傾聴します。ご家族へのサポートも重視し、介護負担や経済的な不安についても適切な制度やサービスを紹介します。

Q. アドバンス・ケア・プランニング(ACP)はどのように進めますか?
A. ACPでは、医師が予後予測を説明し、延命治療の希望や最期の過ごし方について患者さんの意思を整理します。大田ケアのチームもその意思が尊重されるようサポートします。

Q. 申し込み後、どのくらいで訪問が始まりますか?
A. ケアプランが確定し、必要書類が整い次第、通常は1週間以内に初回訪問を設定します。急ぎの場合は調整してより早い開始も可能ですので、ご希望があればご相談ください。

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