前立腺がんとは:基本的な知識と理解
前立腺がんとは、男性特有の臓器である前立腺に発生する悪性腫瘍の一種です。前立腺は膀胱の下、尿道の周囲に位置し、精液の一部をつくる重要な役割を担っています。この部位にがんが発生すると、排尿や性機能に関わるさまざまな症状を引き起こすことがあり、患者本人の生活の質に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、前立腺がんと診断された方やその疑いがある方にとって、病気の基本的な性質を理解することが第一歩となります。
腺がん(前立腺がんの代表的タイプ)
前立腺がんの多くは「腺がん」と呼ばれるタイプであり、日本人の前立腺がんの約90%を占めています。この腺がんは前立腺の腺組織に由来し、比較的ゆっくり進行することが特徴ですが、中には早期に転移するケースもあります。また、前立腺がんはその進行度や悪性度によって分類され、治療方針の決定に大きく関わります。たとえば、病期やグリソンスコアと呼ばれる病理学的な評価によって、手術・放射線治療・ホルモン療法・経過観察といった選択肢が検討されます。
前立腺がんの理解は、単に医学的な側面だけではなく、今後の生活設計にも直結します。排尿や性生活への影響、さらには治療に伴う副作用への対処を見据えて準備を整えることは、患者自身の安心にもつながります。したがって、前立腺がんがどのような病態で、どのような治療の選択肢があるのかを正しく知ることは、診断を受けたその瞬間から取り組むべき重要な課題といえるでしょう。
転移しやすい前立腺がん
前立腺がんは、特に進行すると骨やリンパ節への転移が非常に多いがんです。骨への転移では、脊椎(背骨)や骨盤、大腿骨などが特に多く見られ、痛みや骨折を引き起こすことがあります。また、リンパ節への転移は全身へ広がる「入り口」となることがあります。肺や肝臓、脳など他の臓器へ転移する場合もありますが、骨転移ほど頻繁ではありません。
骨(特に脊椎、骨盤、大腿骨など):
前立腺がんは進行すると転移を起こしやすい性質を持っており、特に骨やリンパ節への転移が頻繁に見られます。骨への転移は前立腺がんに特有の特徴で、脊椎(背骨)や骨盤、大腿骨など体を支える重要な部位に起こりやすく、激しい痛みや骨折、さらには脊髄を圧迫することによる麻痺など、生活の質を大きく損なう症状を引き起こすことがあります。
特に進行した段階である「去勢抵抗性前立腺がん」では、患者の8割以上に骨転移が確認されるとされており、その影響の大きさがうかがえます。
リンパ節:
リンパ節への転移も重要な特徴のひとつです。リンパ節はがん細胞が全身に広がるための通り道となるため、ここに転移が生じるとさらに遠隔臓器へ病気が進展するリスクが高まります。肺や肝臓、脳といった他の臓器に転移が認められることもありますが、その頻度は骨転移に比べると少なく、前立腺がんの転移における中心的な舞台はやはり骨とリンパ節だといえるでしょう。
治療とがんリハビリテーションの重要性
初期の前立腺がんであれば、大腸内視鏡によるポリープ切除や粘膜下層剥離術など低侵襲治療で完治が目指せます。しかし、進行がんでは部分的または全大腸切除術(結腸切除・直腸切除+リンパ節郭清)に加え、術後の化学療法(抗がん剤治療)が必要になることが多いです。また、直腸がんでは人工肛門(ストーマ)造設が行われる場合もあります。
こうした外科的治療や化学療法の影響で、排便コントロール障害、腹部痛、体力低下、ストーマケアの不安など、日常生活におけるさまざまな課題が生じます。そこで訪問看護・訪問リハビリテーション(がんリハ)では、多職種チームが連携して以下の支援を行います。
- 排便機能のサポート:ストーマ管理や便秘・下痢対策、排便リズム整備を支援
- 栄養管理:体重減少の予防、食欲不振への対応、腸管負担の少ない食事指導
- 体力・ADL維持:歩行練習、日常動作練習、呼吸リハビリ等で全身状態を整える
- ストーマケア・心理的支援:ストーマ装具のセルフケア指導と精神的サポート
- 疼痛管理:腹痛や創部痛に対するケアと適切な薬剤管理の調整
これらの訪問支援により、ご自宅での安心・安全な療養環境を整え、症状の悪化防止やQOL(生活の質)の向上を図ります。患者さんおよびご家族のニーズに応じて、がん看護専門師や理学・作業療法士、管理栄養士、精神保健福祉士などがサポートを提供します。
前立腺がんと訪問看護・訪問リハビリテーション
初期の前立腺がんであれば、手術を伴わずに経過観察でコントロールできる場合もあり、限局している場合には前立腺全摘除術や放射線治療などの根治的治療によって治癒が期待できます。これらは比較的低侵襲で行われることも増えており、体への負担を最小限にしながらがんを制御することが可能です。しかし、進行がんや再発がんになると、手術単独では不十分であり、放射線療法に加えてホルモン療法、さらには化学療法や新規薬剤治療(分子標的薬、免疫療法など)が必要となるケースが多くなります。
こうした治療は排尿機能や性機能に影響を与えることがあり、尿失禁や頻尿、勃起障害などが日常生活の大きな課題となります。また、化学療法やホルモン療法では体力の低下、骨粗鬆症の進行、ほてりや気分変動といった副作用も見られるため、患者本人と家族にとって身体的・精神的な負担は少なくありません。
そのため、訪問看護や訪問リハビリテーションでは、患者が自宅で安心して療養を続けられるよう多職種チームが連携し、生活全体を支える支援が行われます。排尿コントロールに関するサポートや骨盤底筋トレーニングによる尿失禁改善、栄養指導による体重・体力維持、さらには歩行練習や日常動作訓練を通じて活動性の維持を図ります。加えて、疼痛や治療に伴う副作用への適切なケア、精神的な不安を和らげる心理的支援も重要な役割を担います。
こうした包括的な訪問支援は、前立腺がん患者が治療の副作用と向き合いながらも生活の質(QOL)を保ち、自分らしい日常を継続できるよう整えるものであり、医療と生活をつなぐ大切な取り組みといえます。
もしかして?前立腺がんの初期症状チェックと進行時のサイン
気づきにくい前立腺がんの初期症状
前立腺がんは、早期の段階では自覚できる症状がほとんどなく、多くの場合は健康診断や人間ドックで行われる血液検査(PSA検査)によって偶然に発見されます。そのため、気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。しかし、日常生活の中で微細な変化に注意を払うことで、早期に医療機関を受診するきっかけをつかむことができます。
初期の前立腺がんでは、排尿に関する不調が代表的なサインです。尿の勢いが弱くなる、排尿の途中で途切れる、夜間に何度もトイレに起きるといった症状が現れることがあります。また、排尿後に残尿感が強く残る場合や、血尿が見られる場合も注意が必要です。さらに、精液に血が混じることや、下腹部から腰にかけての鈍い痛み、原因不明の体重減少や疲労感が続くことも見逃せない変化です。
がんが進行すると、前立腺の肥大や腫瘍の浸潤によって尿道や膀胱が圧迫され、排尿困難や尿閉といったより強い症状が現れるようになります。さらに骨やリンパ節に転移した場合には、腰痛や骨の痛み、下肢のしびれ、むくみなどが出ることもあります。
もしこれらの症状が2週間以上続く、あるいは改善が見られない場合には、自己判断で放置せず、泌尿器科を受診して検査を受けることが推奨されます。前立腺がんは早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、生活の質を大きく損なうことなく治療に臨むことが可能となるため、日々の小さなサインを見逃さないことが重要です。
前立腺がんが進行した場合に現れる症状
前立腺がんが進行した場合に現れる症状については、腫瘍そのものによる局所的な影響と、転移による全身的な症状に大きく分けられます。
局所的な症状
前立腺がんが前立腺内で大きくなると、尿道や膀胱を圧迫するため、排尿障害が強く現れるようになります。具体的には、尿の勢いが極端に弱くなる、排尿に時間がかかる、残尿感が持続する、夜間頻尿で何度も起きる、排尿時に強い痛みや灼熱感を伴う、といった症状です。また、進行により血尿や精液に血が混じることもあり、これは腫瘍が尿道や周囲の血管に影響を及ぼしているサインと考えられます。さらに、腫瘍が直腸を圧迫すると便通異常や下腹部の不快感が生じることもあります。
骨転移による症状
前立腺がんの進行で最も特徴的なのは骨への転移です。特に腰椎や骨盤、大腿骨などに転移しやすく、持続的な腰痛や骨の痛みが現れます。転移部位が進行すると骨折が起こりやすくなり、脊椎への転移では脊髄を圧迫して下肢のしびれや麻痺、歩行困難につながることもあります。骨転移に伴う痛みは強く、生活の質を大きく損なう要因となります。
リンパ節や他臓器転移による症状
リンパ節に転移すると、下肢のむくみやリンパ液の流れの停滞が起こることがあります。さらに、肺や肝臓へ転移した場合には呼吸困難や咳、黄疸や肝機能障害といった全身症状が現れます。脳への転移は頻度としては少ないものの、発生した場合は頭痛やけいれん、神経症状など深刻な影響を及ぼします。
全身的な症状
進行がんに伴い、体重減少、強い倦怠感、貧血、食欲不振など、がん特有の全身症状が現れることもあります。これは腫瘍の活動性や炎症反応の影響に加え、治療の副作用も関わっている場合があります。
チェック後の対応と内視鏡検査の重要性
- 症状の継続期間を確認
症状が2週間以上続く場合は、速やかに専門医へ受診しましょう。 - 医師に伝えるべき情報
- 症状の開始時期・頻度、便通との関係
- 既往の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)
- 家族歴(前立腺がんやポリポーシス疾患)
- 喫煙・飲酒歴、食生活の特徴
- 検査の選択
- 便潜血検査:スクリーニングとして有効
- 大腸内視鏡検査:ポリープ切除や生検が可能で、早期発見に最も有効
症状の継続期間を確認することは、前立腺がんの早期発見において重要なポイントです。もし排尿に関する不調や血尿、腰痛といった症状が2週間以上続く場合には、放置せず速やかに泌尿器科の専門医を受診することが推奨されます。
医師に相談する際には、症状がいつから始まったのか、その頻度や強さ、日常生活や排尿習慣との関係について具体的に伝えることが役立ちます。また、前立腺炎など過去の泌尿器系疾患の有無や治療歴、さらに前立腺がんの家族歴があるかどうかも重要な情報となります。喫煙や飲酒といった生活習慣、食生活の特徴などもリスク評価の参考になるため、できる限り正確に伝えることが望まれます。
検査の選択肢としては、まずスクリーニングとして血液検査によるPSA(前立腺特異抗原)測定が広く行われています。異常値が認められた場合には、直腸診やMRI検査が追加され、必要に応じて前立腺生検によって確定診断がなされます。こうした検査によって早期のがんを見つけることができれば、手術や放射線治療などの根治的な治療につなげることが可能です。
国立がん研究センターの統計によれば、早期に診断された前立腺がん(ステージI)では5年生存率が90%を超える一方で、転移を伴う進行例(ステージIV)では10%前後に低下するとされています。この大きな差は、早期受診と早期治療の重要性を物語っています。わずかな違和感や変化でも軽視せず、医師の診察を受けることが、治療の選択肢を広げ、生活の質を守ることにつながります。
前立腺がんの原因とリスク要因チェックリスト
以下の項目は、前立腺がんのリスクを高める可能性がある要因です。あてはまるものがいくつあるかを確認し、生活習慣や検診の見直しに役立ててください。
前立腺がんのリスク要因チェックリスト
- 年齢:特に50歳以上でリスクが高まり、発症の多くは中高年に集中する
- 家族歴:父親や兄弟など直系の家族に前立腺がん患者がいる場合、発症リスクが上昇する
- 遺伝要因:特定の遺伝子変異(BRCA1/2など)が関連しているとされる
- 人種・民族:欧米諸国の男性に多く、日本を含むアジア圏では比較的低いが近年増加傾向にある
- 食生活:高脂肪食、特に動物性脂肪や赤身肉の過剰摂取はリスク要因と考えられている
- 喫煙:直接的な因果関係は限定的だが、進行がんや死亡リスクの上昇との関連が指摘されている
- 肥満:進行性前立腺がんのリスクや再発率を高める可能性がある
- ホルモン環境:男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を強く受けるがんであり、ホルモンバランスが発症や進行に関与する
ストレスとの関係について
ストレス自体が直接前立腺がんを引き起こす明確な証拠はありませんが、ストレスによる食生活の乱れ(高脂肪・高カロリー食への偏り)、運動不足、睡眠障害が間接的にリスクを高める環境をつくると考えられます。
罹患率と死亡率の男女差
日本における前立腺がんの罹患率および死亡率は、男性特有のがんであるため当然ながら男性に限られています。国立がん研究センターの統計によれば、前立腺がんは日本の男性において最も多いがんのひとつであり、その罹患率は年齢とともに急激に上昇し、特に60歳以上で顕著に増加します。死亡率については他のがんと比べてやや低いものの、人口の高齢化に伴い患者数自体は増加しており、社会的な関心が高まっています。
この背景には、加齢による発症リスクの上昇に加え、食生活の欧米化や動物性脂肪の摂取増加といった生活習慣の変化が影響していると考えられます。また、喫煙や飲酒といった嗜好習慣もリスクに関連しており、日本における前立腺がんの増加傾向を後押ししている要因とされています。
一方で、PSA検査の普及により早期発見されるケースが増えたことから、治療成績は向上しており、早期に診断された場合の生存率は非常に高い水準にあります。したがって、日本における前立腺がんの現状は「患者数は増加しているが、適切な検診と早期治療によって十分に克服可能ながん」と位置づけられるといえるでしょう。
予防のためにできること
- 定期的なPSA検査や泌尿器科でのチェックを受け、早期発見・早期治療につなげる
- 禁煙を心がけ、過度の飲酒を控える
- バランスの取れた食生活を意識し、動物性脂肪や赤身肉の摂取を控えつつ、野菜・果物・大豆製品・魚などを積極的に取り入れる
- 週150分程度の有酸素運動を目安に、無理のない範囲で継続的に体を動かす
- 適正体重を維持し、糖尿病や高血圧など生活習慣病をコントロールする
- 睡眠の質を高め、ストレスをため込みすぎない生活習慣を整える
- 家族に前立腺がんの既往がある場合には、早期から専門医に相談し、定期的な検査を受ける
前立腺がんは生活習慣と深く関わるがんです。自分でコントロールできるリスク因子を減らし、検診を活用することで予防につなげましょう。
前立腺がん患者さんの在宅療養を支える訪問看護と訪問リハビリテーション
前立腺がんの治療を終えて退院された後、あるいは再発・進行によって通院が困難になった場合でも、患者さんが住み慣れたご自宅で安心して療養を続けるには、医療的かつ生活的な支援を両立できる体制が不可欠です。その中核となるのが「訪問看護」と「訪問リハビリテーション」です。
これらのサービスは、身体的苦痛の緩和、栄養・生活機能の維持、精神的支援、さらにはご家族の介護負担軽減にもつながる、在宅医療の大きな柱となります。
訪問看護の役割:術後ケア、症状緩和、栄養・心理的支援
● 症状管理と術後のケア
訪問看護師は、前立腺がんの手術後に生じやすい身体的な負担を軽減し、患者が安心して日常生活に復帰できるようにきめ細やかな支援を行います。前立腺全摘除術の後には、尿失禁や頻尿、排尿リズムの乱れといった排尿機能の障害がよく見られるため、パッドやカテーテルの管理、スキンケア、骨盤底筋トレーニングなどを組み合わせて排尿機能の安定を図ります。また、勃起障害といった性機能への影響も伴うことがあり、必要に応じて医師やカウンセラーと連携し、患者とその家族の心理的サポートも提供します。
さらに、ホルモン療法や化学療法が行われている場合には、副作用として現れる倦怠感やほてり、食欲不振、手足のしびれなどを観察し、薬剤管理を適切にサポートします。骨転移による痛みや呼吸苦といった症状が出現した場合には、緩和ケアの視点から疼痛コントロールや呼吸補助を行い、快適な在宅療養環境を整えることも重要な役割です。このように訪問看護は、治療後の生活上の困難を最小限に抑え、患者が自宅で安心して療養を続けられるよう多面的な支援を担っています。
● 栄養管理と経管栄養サポート
栄養管理においては、消化吸収機能の低下や食欲不振によって低栄養に陥りやすい前立腺がん患者さんの状態を把握し、管理栄養士や医師と連携して食事形態の工夫や補助栄養食品の導入を提案します。経口摂取が難しい場合には胃ろうや中心静脈栄養、輸液ポートを用いた栄養補給にも対応し、脱水や体重減少の予防に努めることで、治療効果を支える体力の維持を図ります。
● 精神的ケアとACP(人生会議)の支援
患者さんとご家族が抱える精神的な不安にも寄り添い、訪問看護師は信頼できる相談相手としてその心情を傾聴します。進行期や終末期には疼痛や呼吸困難への不安が強まるため、安楽な体位の提案や痛みを緩和する援助を行うだけでなく、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を通じて「どのように最期を迎えたいか」というご本人とご家族の思いを尊重した話し合いの場を設け、生き方や治療方針を共に考える支援を行います。こうした医療的・生活的・心理的ケアを総合的に提供することで、訪問看護は前立腺がん患者さんの在宅療養を支える要となるのです。
訪問リハビリテーションの内容:体力維持と生活再建の支援
● 理学療法(PT)・作業療法(OT):体力・機能維持の支援、日常生活の再構築
訪問リハビリテーションでは、前立腺がん手術後や治療後に生じやすい筋力低下や倦怠感、体力減少に注目し、患者の身体機能を維持・回復させるための運動プログラムを構築します。特に、長期安静による廃用症候群を予防するために筋力強化訓練やバランス訓練を取り入れ、歩行や立ち上がりなど日常生活に直結する基本的動作の自立性を高めます。
また、骨転移のリスクを考慮しながら安全に行える運動を選択し、活動範囲を広げることを支援します。呼吸リハビリテーションによって呼吸筋を鍛え、全身の持久力を高めながら、身体への負担を軽減します。さらに、杖や歩行器などの福祉用具の選定や使い方をアドバイスし、ご自宅での安全な移動をサポートします。
同時に、前立腺がんの治療に伴って生じやすい排尿コントロールの課題や尿失禁による生活の不便さに焦点を当て、患者が“自分らしい生活”を取り戻せるように支援します。
具体的には、衣服の着脱やトイレ動作を円滑に行えるよう練習し、失禁ケア用品や自助具の適切な使い方を指導し、さらに、台所での調理や掃除といった家事動作の工夫を学びながら、自立した生活を続けられるようサポートします。
住環境に関しても、動線の見直しや手すりの設置、段差解消などの改善提案を行うことで、安全かつ安心して暮らせる環境を整えます。こうした取り組みによって、患者は身体的制限を補いながら生活動作の自信を取り戻し、治療後もより自立的な日常を送ることが可能となります。
● 社会参加と心理的回復の促進
さらに、在宅での療養生活における心の支えとして、リハビリ専門職は社会参加や趣味活動の再開を後押しします。
前立腺がん治療後は外出機会が減りがちですが、近隣のウォーキングや体操教室への参加、オンラインサロンでの交流など、興味や体調に合わせた活動を支援・提案します。
こうした“できること”を増やす経験を通じて、自尊心の回復や孤立感の軽減が促進され、身体機能だけでなく心の回復にもつながるのです。
多職種連携によるチームアプローチの重要性
前立腺がんの患者さんは、身体症状だけでなく、栄養・生活機能・精神面・経済的問題など、多方面にわたる課題を抱えることがあります。こうした複雑なニーズに応えるためには、以下のようなチーム連携による対応が不可欠です。
- 医師(主治医)
- 訪問看護師
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
- 管理栄養士
- 薬剤師
- ケアマネジャー
- ソーシャルワーカー
- ホームヘルパー など
定期的なカンファレンスや情報共有を通じて、全員が一つの目標に向かって連携することが、より良い療養環境の実現に繋がります。
訪問サービス導入の流れとケアプラン作成
訪問看護やリハビリテーションの導入は、入院先の医療機関や地域のケアマネジャー、在宅支援チームを通じて進められます。退院前には「退院前カンファレンス」が開かれる場合があり、その際に退院後の生活設計や支援体制が協議されます。
サービスの導入にあたり、ケアマネジャーによって、個別のケアプランが作成されます 。このケアプランは、画一的なものではなく、患者さん一人ひとりの目標やニーズに合わせてオーダーメイドで作成され、また訪問看護師やリハビリ職種が全身状態・生活状況・本人の希望を踏まえたアセスメントを行い、看護計画・リハ計画を作成します。このプランは定期的に見直され、常に患者さんの状況に応じた最適な支援が提供されるよう調整されます。
大田区鵜の木の訪問看護・訪問リハビリ ─ 大田ケア訪問看護ステーション
大田ケア訪問看護ステーションでは、前立腺がんの治療後や再発・進行期にあるご利用者さまが、ご自宅で自分らしく療養生活を送ることができるように、訪問看護師とリハビリ専門職が連携して支援を行っています。
私たちの強みは、ご利用者さまのわずかな体調や食欲の変化、生活リズムの変動を丁寧に見逃さずキャッチし、必要な支援をすぐにご家族と共有できる体制を整えている点にあります。栄養管理、症状緩和、体力維持のリハビリを軸に、ご家族とチームで在宅ケアを進めています。
がんの緩和ケアの土台は「対話による心のつながり」
前立腺がんのご利用者さまにとって、術後の体調変化や栄養障害、不安感は避けて通れないものです。大田ケアの訪問看護師は、患者さんの体調や精神状態だけでなく、食事摂取状況や栄養状態、排便・水分バランスまで細やかに観察し、必要に応じて介入計画を柔軟に調整します。
リハビリスタッフも、患者さんの「日常生活を少しでも快適に送りたい」「体力を取り戻したい」といった目標の達成に向けた支援内容を、常にご家族さまと共有。その過程で、ご家族さまも「ケアチームの一員」として主体的に関わることができるようになります。
24時間365日対応可能な安心の連絡体制
大田ケアでは、緊急時にも対応できるよう24時間365日体制の連絡窓口を完備。たとえば、急な嘔吐・下痢、脱水が懸念される場合などにも、専門の看護師が迅速に受診先の案内や応急処置のアドバイスを行います。
訪問開始時に、緊急時の対応フローを事前にご家族へ明確に説明し、夜間や休日にも慌てず冷静に行動できるようサポートします。
ご家族も安心して関われるケアの仕組み
訪問スケジュールやケアプランの内容については、ご利用者さまの生活スタイルやご家族さまの都合を丁寧に伺いながら調整。ご家族さまが果たす役割も明確にし、「無理なく・安心して支えることができる」体制づくりを目指します。
連絡ノートの活用や訪問時の対話を通じて、患者さん・ご家族・専門職チームとの間に一貫性のあるケアを構築。生活の中で気になる点や変化にもすぐに対応できる、柔軟で親身なサポートを提供します。
「自分らしく、生きる」を一つひとつ増やす
前立腺がんの療養生活では、「食べること」「動くこと」「人と話すこと」が失われがちですが、大田ケアでは、そうした日常の一つひとつを大切に支えています。訪問看護と訪問リハビリが連携し、ご利用者さまの「その人らしさ」を尊重しながら、自宅で安心して過ごせる日々を創造します。
「治療が終わったけど食事に不安がある」「体力が戻らなくて外に出るのが億劫」「家族がどうサポートすればいいか分からない」──そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。大田ケアのチームが、一緒にその一歩を支えてまいります。
FAQ:よくある疑問にQ&A形式で回答
Q. 訪問看護サービスを利用するにはどうすればよいですか?
A. ご利用を希望される場合は、まずかかりつけ医または地域包括支援センターや居宅介護支援事業所を通じて要介護認定の申請を行ってください。要介護認定がおりた後、ケアマネジャーがケアプランを作成し、そのプランに基づいて大田ケア訪問看護ステーションがサービスを提供します。直接当ステーションにご連絡いただいても手続きの流れをご案内できますので、お気軽にお問い合わせください。
Q. 週に何回、何時間利用できますか?
A. 訪問看護の頻度や時間は、ケアプランで決定します。通常は週に1~3回、1回あたり30分から90分程度が目安ですが、症状の度合いやご家族のご希望によって柔軟に調整可能です。リハビリテーションを中心に行う場合や症状管理が多い場合は、より頻度が増えることもあります。
Q. 料金の自己負担はいくらですか?
A. 介護保険をご利用の場合は、要介護度に応じて自己負担が原則1〜3割となります。医療保険適用の訪問看護では、医師の指示で行う注射や点滴なども保険診療としてカウントされ、ご負担額は医療保険の自己負担割合に準じます。詳しい費用については、個別性があるのですが、1割負担の方で60分訪問1000円ぐらいと考えておくとわかりやすいです。
Q. 24時間対応は可能ですか?
A. 大田ケアでは夜間・休日のオンコール体制を整えており、急な痛みの悪化や呼吸困難などの緊急事態にも電話でのご相談を受け付けています。緊急度が高いと判断した場合は、訪問看護師が緊急訪問を行い、一次的な対応を実施します。
Q. 訪問リハビリテーションはどのような内容ですか?
A. がん治療に伴う筋力低下や関節可動域制限、呼吸機能の低下を軽減するための運動プログラムを提供します。ベッド上で行う抗重力運動や呼吸リハビリ、リンパ浮腫ケアを組み合わせ、患者さんの体調に合わせて無理なく継続できる方法をご提案します。
Q. 自宅に必要な福祉用具はどう手配すればよいですか?
A. ケアマネジャーと連携し、手すりやスロープ、ポータブルトイレ、シャワーチェアなどの福祉用具を介護保険サービスでレンタルできます。大田ケアのスタッフがご自宅を訪問して適切な配置や使い方をアドバイスし、安心・安全な環境づくりをサポートします。
Q. 医師との連携はどのように行われますか?
A. 訪問看護師は定期的にバイタルサインを記録し、症状の変化を詳細に把握して医師に報告します。必要に応じて医師の指示を取り付け、薬剤の調整や注射管理を行うほか、電話やオンラインでの迅速な連絡体制を整えています。
Q. 心理的なサポートも受けられますか?
A. 看護師が日常的な会話を通じて不安や悩みを傾聴します。ご家族へのサポートも重視し、介護負担や経済的な不安についても適切な制度やサービスを紹介します。
Q. アドバンス・ケア・プランニング(ACP)はどのように進めますか?
A. ACPでは、医師が予後予測を説明し、延命治療の希望や最期の過ごし方について患者さんの意思を整理します。大田ケアのチームもその意思が尊重されるようサポートします。
Q. 申し込み後、どのくらいで訪問が始まりますか?
A. ケアプランが確定し、必要書類が整い次第、通常は1週間以内に初回訪問を設定します。急ぎの場合は調整してより早い開始も可能ですので、ご希望があればご相談ください。
情報源・出典元データなど
専門機関
- 世界保健機関(WHO)palliative care fact sheet
- 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」
- 前立腺がん|がんに関する情報|がん研有明病院
- 日本緩和医療学会 ガイドラインページ
- 厚生労働省「緩和ケアの推進」ページ/第4期がん対策推進基本計画
- NCCN Guidelines® Palliative Care(2024年版)
- 公益財団法人 日本訪問看護財団
学術論文
- アドバンス・ケア・プランニング(ACP)に関する看護研究(J-STAGE)
- Patient-Controlled Analgesia in Palliative Care: Exploratory Scoping Review(2025)
- 在宅ホスピスにおける家族介護者の負担研究(J-HOPE)
- Mindfulness in End-of-Life Care(2024, Sciencedirect)
- Resilience-Building in Palliative-Care Professionals: Scoping Review(BMJ Supportive & Palliative Care 2025)
その他、Webサイト
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